
たとえば、あなたが何かトラブルに巻き込まれて
裁判になったとしよう。
そんなとき、もし、裁判官が
「政府に逆らったらクビにされるかも」と思っていたら?
「この判決出したら、次の任期もらえないかも」
ってビクビクしていたら?
そんな人に、自分の運命をゆだねたくないよね。
だからこそ、
裁判官には「自分の判断に集中できる環境」が必要なんだ。
それを守っているのが、日本国憲法の第80条。
これについて、天使くんと悪魔くんが話してくれているから、是非最後まで読んでいってね!
第80条【下級裁判所の裁判官】
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
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下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

悪魔くん、今日は日本国憲法第80条について話そう!
まずはさ、意訳してみてよ

下級裁判所の裁判官(高裁とか地裁とかのやつらな)は、
最高裁が「こいつがいい」って選んだ名簿をもとに、
内閣が任命するんだとよ。
で、任期は10年。
まぁ希望すりゃ、もう一回やることもできる。
ただし、決まった年齢になったらさっさと辞めなきゃならねぇ。
あと報酬(つまり給料な)は定期的にもらえるんだけど、
在任中に「お前の給料、下げとくわ」ってのはダメって決まりだ。

うんうん、いいね!

下級裁判所ってあれか、
高等裁判所
地方裁判所
家庭裁判所
簡易裁判所
の4つのことだよな。

うん、そのとおり。

でさ、結局よ、下級裁判所の裁判官も、
最高裁が選んだ名簿から内閣が任命するってだけの話だろ?
任期は10年、給料も減らされない。
ぬるま湯ってやつだな。
10年も同じ椅子に座れて、しかも給料ガッチリ保証とか甘すぎねぇか?

うーん、悪魔くん、ちょっと誤解してるかもね。
これは「ぬるま湯」じゃなくて、
「司法の独立を守るための仕組み」なんだよ。

また出たよ、“独立”ってやつ。
そんなの建前だろ?
裁判官も公務員なんだから、ほかの公務員みたいに、
都合にあわせて任期変えたり、給料カットしたりすりゃいいじゃん。

いやいや、それじゃダメなんだ。
裁判官ってのは、政府や権力者の不正を正す役割があるんだよ。
そんな人たちが
「クビにされるかも」
「給料下げられるかも」
ってビクビクしてたら、
本当に正しい判断なんてできなくなっちゃうでしょ?

ふーん……
でもさ、内閣が任命するなら、
結局「お上の推薦」ってことじゃねぇの?
それで「独立してる」って言えるのかよ?

いいとこ突くね。
確かに任命は内閣だけど、
名簿は最高裁判所が作るんだ。
つまり、実際に選んでいるのは司法の人たち。
内閣は、それを形式的に承認するだけ。
それに、任期が10年っていうのも、
政治の風向きに左右されずに
仕事ができるようにするための工夫なんだよ。

でもさぁ、自民党の改憲草案だと、
その「10年」って任期を法律で決めるように変えたいらしいぜ?
そっちの方が臨機応変って感じでいいような気がするぜ。

いや、それが一番危ないところなんだ。
憲法っていうのは、
めったに変えられない、変えてはいけない、
「国のルールでも一番強いルール」だよね。
でも、法律は国会で数の力があれば簡単に変えられる。
だから、もし任期が法律だけで決まるようになったら……
たとえば「1年だけの任期」って法律を作って、
気に入らない裁判官を次々と入れ替えることもできちゃうんだ。

うわ、それ……独立どころか、完全支配じゃねぇか。

そうなんだよ。
だから「10年」「再任あり」「報酬は減額不可」って、
憲法でしっかり定めてる。
裁判官が誰にも脅されずに、
淡々と憲法と法律、そして良心に基づいた判断ができるように。

でも、国民審査みたいなチェックは
下級裁判所の裁判官にはないんだろ?
じゃあ暴走しないように、任期短くして監視すべきじゃねぇの?

国民審査は最高裁判所の裁判官だけの制度だけど、
下級裁判所の裁判官にも「弾劾裁判」っていう仕組みがあるよ。
これは、国会で不適切と判断された裁判官を辞めさせる制度。
(第64条)
つまり、ちゃんと「外からの監視」もあるんだ。
ただし、それも権力が悪用できないように慎重に運用されてるけどね。

なるほどなぁ……
なんか、ただの甘やかされた制度かと思ったけど、
ちゃんと理由があって守られてるんだな。

そう。
司法っていうのは、「誰かの味方になる」のではなく、
「ルールを守るために存在する」んだ。
そのために、裁判官には「安心して判決できる環境」が必要なんだよ。
まとめ
裁判官がちゃんと独立して仕事ができるかどうかって、
実は私たち一人ひとりの安心や自由に直結していることがお分かりいただけたと思います。
パッと思いつくような犯罪だけではなく、
たとえば、理不尽な解雇、生活保護の打ち切り、差別的な扱いなどなど。
そういった問題に対して、「最後に味方になってくれるかもしれない存在」が裁判所です。
でもその裁判所が、権力の顔色ばかりうかがっていたら?
会社の社長の顔色優先で判断していたら?
それはもう「正義の場」ではなくなってしまいます。
憲法第80条は、そうならないように裁判官の身分や待遇を保障して、
“ビクビクせずに”正しい判断ができる環境を整えているんです。

裁判官たちにも、この憲法をいつも胸に抱えていてほしいよね!
