こちらは日本国憲法第58条の解説記事です。
前編・後編の2部構成としています。
基本的には前編だけでも、その条文の伝えたいこと、
自民党提案の改正草案の中身(問題点)がわかるようにしています。
まずは前編でも是非読んでいただけたら嬉しいです。
更に深堀した内容は後編に書いていますので、
興味のある方は最後まで是非。
前編:日本国憲法第58条【役員の選任及び議院の自律権】
意訳
原文
この第58条が伝えたいポイント
自民党による改正草案について
この条文については変更なしです。
後編:日本国憲法第58条を更に深堀してみよう
要点①:議長は議員による選挙で決める
総選挙が行われて議員が一新したら、まずは議長を決めます。
というのも、国会法にてそのように定められているからなんです。
国会を開くときに議長・副議長がいない場合は、最初に選挙で決めるように、と。
なお、議長が決まるまでは事務総長が代行します。
そして、議長が決まってから、その新議長のもとで国会の開会式が行われます。
※事務総長というのは、各議院の活動を補佐する事務局のトップです。
こちらは国家議員ではなく、国家公務員となります。
議長の指名によって就任することが通例です。ですので、新たな議長が決まるまでは、
前議長の指名によって就任した事務総長が議長代理を行うということのようですね。
要点②:そのほかの役員とは
議長・副議長のほか、常任の委員長がいます。
委員会とはつまり、
本会議に議案として出す前に、数名の議員だけで事前に調査や議論を交わす会議のことです。
どんな委員会があるのか興味のある方は、是非下記のリンクよりご覧ください。
※外部リンク、別ウィンドウにて開きます。
※参議院は一覧表がないため省略。代わりに委員長一覧にします。
要点③:懲罰の種類
憲法や国会法とは別に衆議院規則や参議院規則を作ることも、憲法にて認められています。
この規則では、議院における活動の仕方等様々なことが細かく決められています。
例えば、国会における発言の仕方、表決の仕方等……。
そして、この規則を守らなかった議員は懲罰委員会にかけられます。
これは議院の活動を円滑に進めるために、そして議院の自律性を守るためです。
懲罰については国会法にて以下の4種類が定められています。
- 戒告
-
公開の議場で𠮟ること
- 陳謝
-
公開の議場で謝らせること
- 登院停止
-
一定期間、議院に出てこられなくすること(最大30日間)
- 除名
-
議員の資格をなくすこと
なお、意図的に除名させられることのないよう、出席議員の3分の2以上の賛成が必要です。
要点④:資格はく奪と除名の違い
ところで、第55条「資格争訟」でも議員の資格はく奪について規定されています。
この資格はく奪と除名の違いとはなんでしょうか?
それは以下の通りです。
- 第55条における資格はく奪とは
-
「そもそも議員に立候補する資格があったのかどうか」「議院を兼職していたか」が争点となります。
実際は、選挙管理委員会によるを経てようやく立候補できるので、
資格のない者が立候補し当選したということはないため、適用されたことはありません。 - 議院規則による除名とは
-
こちらは「議院の秩序を乱したかどうか」が争点となります。
そしてこれは懲罰としての資格はく奪です。
学校における退学、または職場での懲戒解雇のようなものだと思っていただければいいかもしれません。
後記
記事の中で紹介した議院規則の中には「秩序」という項目もあるのですよ。
以下に一部を紹介しておきます。
議員は、議院の品位を重んじなければならない
議事中は参考にするものを除いては新聞紙及び書籍等を閲読してはならない
議事中は濫りに発言し又は騒いで他人の演説を妨げてはならない
……ハテ……
繋がりのある条文
この第58条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
最後まで読んでくださってありがとうございました。