
たとえば、会社でなにかトラブルがあったとき。
「部長、ちゃんと説明してください!」って部下たち、
または逆に役員から役員会に出席して説明することを求められたとき。
部長が「いや、今ちょっと忙しいから」って逃げたら、
どう思いますか?
――なんかモヤモヤするよね。
政治の世界でも同じなんだ。
総理大臣や大臣といった人たちは、
国会でちゃんと説明責任を果たす必要がある。
それをルールとして決めているのが、この日本国憲法の第63条。
これについて、天使くんと悪魔くんが話してくれているから、
是非最後まで読んでいってね!
第63条【国務大臣の出席】
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有するしないとにかかはらず、何時でも議案について発言するために議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

悪魔くん、今日は日本国憲法第63条について話そう!
まずはさ、意訳してみてよ

総理とか大臣ってのは、議員じゃなくても国会に来て発言していいし、
議会の方から「来いよ、説明しろ」って言われたら、
イヤでも出席しなきゃならねぇってことだ。
サボるのは禁止。逃げ道なし、ってやつだな。

うんうん、いいね!ちょっと口調は荒いけど。
これは「国務大臣の出席義務」って言って、
国会が政府のやっていることをちゃんとチェックするためにある、
大事なルールなんだ。

ふーん。でもさ、総理とか大臣って忙しいんだろ?
いちいち呼び出してるヒマがあったら、仕事させてやれっての。

たしかに忙しいだろうね。
でもね、忙しいから説明しなくていいってなったら、
誰も責任を取らなくなるよ?
たとえば、変な法律を作ろうとしても
「説明はあとで」って逃げられたら?
そんなの困るでしょ?

それに、それも含めての職務だからね。
忙しいもないもないんだ。

でも昔の憲法じゃ、そんな義務なかったんだろ?
明治憲法のときは「出席してもいい」ってだけだったんじゃ?

そう、それが問題だったんだよ。
権力を持つ人が「出たいときだけ出る」って、都合よすぎない?
だから今の日本国憲法では、
「呼ばれたら必ず来て、説明しなさい!」ってルールに変えたんだ。

なるほどなぁ。
でも今、自民党はこの条文を変えようとしてるんだろ?
「都合があれば出なくてもいいよ」ってやつに。

そうなんだよ。
憲法改正草案では、
「職務の都合で必要な場合は出席しなくてもいい」
っていう一文が追加されてる。
一見、当たり前のことのように見えるかもしれないけど、
それって“重要なときこそ国会をスルーできる”って話でもあるんだ。

外交とか緊急事態のときはしかたないだろ。
大臣が海外行ってるときに呼び出せってのか?

本当に物理的に無理なときは、あとで出席すればいいだけだよ。
でも、憲法に「出なくていい場合がある」って書いてしまうと、
「出ない理由」をいくらでもこじつけられるようになっちゃう。

ってことは…憲法から変わったら、
大事な議論から逃げられる可能性も出てくるわけか。

その通り。
たとえば戦争や外交、はたまた国民の生活にものすごく関わることで、
国会が「ちゃんと説明しろ!」って言っても、
「今は忙しいから」って出てこなかったら、
国民は何も知らされないまま物事が進んじゃうよね。

…それ、けっこうヤバいな。
ああ、そうか。
出席義務って、ただの出席じゃなくて、
国会が内閣を監視することを可能にする「しばり」ってことか。

そう。それは国民の安心を守るためのしばりなんだ。
憲法って、国民を守るために、
エラい人たちの行動に制限をかけてる部分が多いんだよ。

なるほどな。
最初は「サボれないなんて面倒くせぇな」って思ったけど、
裏を返せば、それだけ大臣には責任があるってことか。
……ちょっと見直したぜ。

うん、それでこそ民主主義ってやつなんだよ。
政治は一部の人のためじゃなくて、みんなのためにあるんだからね。
まとめ
憲法第63条って、ただ「大臣は国会に出なきゃダメだよ」というだけの話ではありません。
これは、国民の声をちゃんと政治に届けるための「道」をふさがないようにするルールです。
もしこの条文がなかったら?
政府が勝手に決めたことを、誰も問いただせなくなるかもしれません。
「説明しろ!」って言っても「忙しいからムリ」で済まされちゃうかもしれない。
でも、それじゃあ民主主義とは言えないですよね。
政治は一部の偉い人たちだけのものじゃなく、
私たち国民が主役であるために、政府に対して「説明してもらう権利」がある。
この第63条は、それをちゃんと機能させるための、大事なピースなんです。

こうやって意味を知っていくと、
「あ、憲法って、ちゃんと僕たちのためにあるんだ」
って思えてこない?
一緒に大切にしていこうよ。
