
実は、日本国憲法には
「内閣のメンバーは“文民”でなければならない」
という決まりがあるんだ。
この“文民”って何だか難しそうに聞こえるけど、
要するに「軍の人ではなく、民間の立場の人」という意味。
たとえば、会社でいえば
「工場の現場責任者じゃなくて、
経営陣に入るには一回スーツに着替えてから来てね」
みたいなルールってとこかな。
これについて、天使くんと悪魔くんが話してくれているから、
是非最後まで読んでいってね!
第66条【内閣の組織と責任】
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2
内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

悪魔くん、今日は日本国憲法第66条について話そう!
まずはさ、意訳してみてよ

内閣ってのはな、法律にしたがって、
総理大臣とほかの大臣たちでできてんだよ。
んで、その大臣たちは「文民」じゃなきゃダメ。
つまり、軍人上がりとか戦争好きはNGってこった。
それからな、内閣ってのはまとめて、国会に責任持てってこと。
誰か一人に押し付けたりしないで、内閣全員でな。

うんうん、いいね!

やたらと細かいなぁ。

そう感じるんだ?
これはね、戦前の反省から生まれた、とっても大事なルールなんだよ。

また「戦前の反省」かよ。もう聞き飽きたって。
軍人がなんでダメなんだ?
優秀な人もいるだろ?
国家のために働くのに、何が悪い。

うん、そこが大事なところなんだ。
この憲法ができた当時、日本は戦争で大きな被害を受けたよね。
でも、そうなる前提として、加害をめちゃくちゃしていた。
これらの背景には、軍人が政治の中枢に入り込んで、
暴走していた、というのもあるんだよ。

ふん…それで「文民」でないとダメってわけか。

そう。
国の政治はあくまで一般の人、
つまり軍人じゃない人たちが担うっていう考え方だよ。
これによって、軍事力が勝手に動き出すのを防ぐんだ。

そっちはまぁわかったけどよ、
責任を「全員で持つ」ってのも妙だな。
誰か一人がミスしても、みんなで責任とるのか?。

そこは「連帯責任」ってことになるんだ。
内閣はチームだから、個人プレーじゃダメなんだ。
で、国会に対して責任を取るってことなんだ。

国会が作った法律やら予算やらなんやらをもとに、
実際に政治をやるのは内閣だもんな。

そうそう。
しかもね、もし国会が「ダメだこりゃ、信用できん」って思ったら、
内閣を辞めさせることもできるんだよ。(第69条)

え、辞めさせられんのかよ!?やば!

うん、内閣は
「国会に選ばれた人たちに信頼されて、初めて仕事ができる」
ってしくみなんだ。
逆に言うと、信頼されなくなったらその仕事を続けちゃいけない。

じゃあ内閣ってのは、
けっこう国会の顔色を見てビクビクしてるってことか?

ビクビク……というより、
「ちゃんと説明して、協力して、一緒に国を運営していく」
ってことだね。
だって、国会は国民の代表なんだから。

つまり、国民に責任を持ってるってことか。
まわりくどいけど、つまりは、
内閣も国民の方見て仕事しろってことなんだな。

そのとおり!君もだいぶ理解してきたね。
「国会に責任を負う」ってのは、
国民に対して誠実であるための約束なんだよ。

さっきの「文民」の話に戻るけどよ。
今の日本は「軍隊」がないよな?
なんでわざわざ入れているんだ?

ああ、それはね…
この「日本国憲法」を作る時にね、
日本はまだまだ諦めていなかったんだ。

諦めなかったって…
もしかして「軍隊を持つことを」、か?

そう。
それで、外国諸国は、日本はまた軍隊を持って
戦争しようとしていると思ったんだ。
そりゃそうだよね。
その流れで、念押しの意味も込めて
「文民に限る」という言葉も入れることにした、
という感じみたいだよ。

チッ
諦め悪いな。

なるほどな。
で、さ、自衛隊出身者はどうなるんだ?

一応、自衛隊を辞めたあとなら
「文民」扱いにしていいってことになっているよ。
自衛隊出身だからといって、
軍議主義的な考えを持っているわけじゃない、という理屈で。
今の日本においては、自衛隊は「軍隊」ではないからね。

とはいえ、あまり好ましいことではないかな。
だから問題視されたりするわけで、ね。

そういうことか。
…そういうのを、変えたいって思っているんだろ?
自民党の改憲案って、確か。

そうなんだよね。
全部改憲されたら、自衛隊は「軍隊」扱いになってしまう。
そして、軍人出身でも大臣になれるようになってしまうんだ。

一応は、現役の軍人はダメってことになっているけれど。
でも、明確な「軍隊」を持とうとしていて。
で、軍隊出身者をわざわざ内閣に入れる…っ
てことが意味していることはわかるよね。

軍事政権の再来じゃねーか。

そういうこと。
この改憲案も危険だってことは、とりあえず覚えておいて。

「文民であること」をわざわざ入れるっていうのも、
単なる形式じゃなくて、過去の反省に基づくルールなんだな…。
まとめ
憲法第66条って、正直ちょっと地味な条文に見えるかもしれません。
でも「内閣のメンバーは文民でなければならない」
「国会に対して責任を負う」
といった内容は、じつは私たちの生活にとても大事なことです。
また、内閣が「国会に対して責任を負う」というルールも、
偉い人が勝手に何でも決めないようにするための大事な仕組みです。
つまり、国会=私たちの代表に対して、ちゃんと説明責任を果たす仕組み、ということです。

たとえば、軍隊出身の人がそのまま政治のトップに立ったら?
歴史を振り返れば、それが独裁や戦争への入り口だったケースも
少なくないんだ。
だからこそ、これも、
日本を「戦争できる国」にしないための
大切な条文の1つでもあるんだよ。
