
たとえばあなたが、
誰かにすごく理不尽なことで訴えられたとする。
「そんなの納得できない!」って思ったとき、
最後の頼みの綱は裁判所になるケースが多いよね。
でも、もしその裁判所が「政府の言いなり」だったら?
本来、中立であるはずの裁判官が
「強い方、お金のある方の顔色」をうかがってたら……?
それって、本当に安心して暮らせる社会って言える?
今回のテーマ「憲法第79条」は、
そんな不安を防ぐための、ものすごく大切なルールなんだ。
これについて、天使くんと悪魔くんが話してくれているから、
是非最後まで読んでいってね!
第79条【最高裁判所の構成及び裁判官任命の国民審査】
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3
前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4
審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5
最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6
最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

悪魔くん、今日は日本国憲法第79条について話そう!
まずはさ、意訳してみてよ

最高裁判所ってのは、
エラい裁判官(長官)と、他の裁判官(判事)でできてんだよ。
長官は天皇が任命。それ以外の判事は内閣が決めるって話だ。
で、内閣が選んだ裁判官が本当に信用できるヤツかどうか、
国民がチェックする場がある。
それが「国民審査」ってやつだな。
えっと、その審査は、最初の衆議院選挙のときにやって、
そのあとも10年ごとにまたチェックする。
結果、国民が「この裁判官ダメだ」って多数が思えば、
そいつはクビにできるってルールだ。
ちなみに、審査の細かいやり方は法律で決めな。
あと、裁判官が引退する年齢も法律を見てな。
それと、裁判官は報酬をちゃんともらえるけど、
その金は任期中に減らしちゃダメって決まりになってる。

うんうん、いいね!

なぁ天使、さっきの条文、意訳してやったけどさ。
結局、裁判官の任命は内閣がやって、
あとで国民が「この人でいいのか?」って審査するだけなんだろ?
しかも、今までクビになった裁判官なんて一人もいねぇ。
この制度、意味なくねぇか?

ふふ、よく読んでくれたね、悪魔くん。
たしかに今まで罷免(=クビ)になった人はいない。
だけど、それで「意味がない」と思うのは早とちりだよ。

なんでだよ?
どうせほとんどの国民は、
「誰がどんな判決出したか」
なんて知らねぇんだよ。
それに肝心の審査だってさ、
名前だけで「×つけろ」って言われても、ピンとこねぇし。

そこは確かに問題だね。
実際「知らないから×をつけづらい」って声は多いし、
制度が形だけになってる部分もある。
だけどね、「国民審査が憲法に書かれてる」ってことが、
すっごく大事なんだ。

国民審査の前に、報道機関が一覧表でも出せばいいんだけどね。
誰が/裁判の中身/判決結果、理由
みたいな感じのを、ね。なんでそういうことやらないんだろう?

なんで?「法律で決めればいいじゃん」って、自民党も言ってるぞ。
「憲法に書かれてても意味ねぇから、法律にまかせようぜ」って。
これは改憲したっていいんじゃないか?

それが危ないんだよ。
憲法っていうのはね、
「政治家が勝手に変えちゃいけない一番大事なルール」なんだ。
そこに「国民が裁判官を審査できる」って書いてあるから、
政府もそれを必ず守らなきゃいけない。
もし憲法から削除して、法律で決めることにする、
とかしたらどうなると思う?

そりゃあ……えーと……
政府が都合よく変えることができるってことか?

その通り!
例えば「審査は任命から1回だけでいい」とか
「この年はやらない」とか、
そんなご都合主義な法律ができちゃうかもしれないよね。
それじゃ国民の監視機能が失われる。
つまり、司法の独立が危うくなるんだ。

司法の独立ねぇ……それもよく聞くけどさ、
裁判官の給料が下がらないとか、
そういうのも「独立のため」とか言ってるじゃん?
でも普通の公務員は下がることもあるぞ。
なんで裁判官だけ特別扱いなんだよ。

うん、それも大事なポイント。
裁判官ってさ、「権力者が嫌がる判決」を出すこともあるでしょ?
たとえば、政府のやり方が違憲(=憲法違反)だって
言わなきゃいけない場面もある。
そのとき「言うこと聞かなきゃ給料下げるぞ」
なんて言われたら……どうなる?

ああ…
ビビって、言いたいこと言えなくなるかもな。

でしょ?
だから「報酬の減額は禁止」って憲法でちゃんと守ってるんだ。
実際、裁判官の給料は月に200万円近くあるけど、
それも「賄賂に負けないように」って意味もあるんだよ。

でもさぁ、2002年には一回、給料下げられてるんだろ?
そのとき違憲じゃなかったのかよ?

お、よく調べてるね!
あれは「国家公務員全体の給料が下がる」という特別な事情があって、
裁判官自身も「それなら仕方ない」って合意したから、
違憲ではないとされたんだ。
大事なのは「内閣の命令で勝手に下げたわけじゃない」ってこと。

……なるほどな。
つまり「金で口をふさぐことのないように」
するための仕組みってわけか。

そう、そしてそれを守るために、
報酬や任期のルール、そして国民審査まで、
ぜんぶ憲法でしっかり決めているんだ。
これを「法律にまかせればいい」なんて話にしちゃったら、
司法の独立も、国民のチェック機能も
「形だけ」のものになってしまうんだよ。

うーん……
俺みたいに「国が強くなきゃダメだ!」って思ってる奴でも、
それで正義の裁判ができなくなるのは、
ちょっとヤバい気がしてきたな。

そう思ってくれたならうれしいな。
「国が強い」の本当の意味って、
「ルールがちゃんとしていて、強い」ってことでもあると思うんだ。
これも、そのルールを守る“憲法の番人が、きちんと独立してこそだね。

へっ……なんか今日は、お前の話、スッと入ってきたわ。
まとめ
「最高裁判所」なんて、ふだんの生活ではあまり意識しないかもしれません。
でも実は、私たちの「最後のよりどころ」とも言える場所です。
たとえば、理不尽な法律が作られてしまったとき、それを止めてくれるのが裁判所。
そして、その裁判所の独立性や信頼性を守るためにあるのが、この憲法第79条なんです。
この条文があるからこそ、
・裁判官は内閣の言いなりにならないように
・国民の手で審査できるように
・給料を盾に脅されないように
そういった「見えないけれど、とても重要な仕組み」が守られているのです。
改憲案では、そうした仕組みを「もっと柔軟に」と言いながら、
実は「国民の目が届きにくくなる方向」に動かそうとしています。
一見もっともらしく聞こえるけれど、その先にあるのは「権力に都合のいい裁判所」かもしれません。

憲法はとにかく、
僕たち国民を「権力者」から守ろうとしてくれているんだ。
だから、裁判に関しても、憲法でこんな風に定められているんだよ。
