
ねぇねぇ、例えばなんだけどね、こんなことを想像してみて。
「昨日の夜、このあたりで事件があったらしい」
「犯人はあなただって証言があった」
「だから裁判します。ああ、そうそう、あなたには弁護士もいません。それから、裁判官は被害者の親戚です」
……え?そんなの不公平じゃない?
って思うよね。
でも、もし憲法にルールがなかったら、
こんなめちゃくちゃな裁判が行われる可能性だって十分にあるんだ。
そうならないようにしてくれているのが、これから天使くんと悪魔くんが話してくれる第37条。
是非最後まで読んでいってね!
第37条【刑事被告人の権利】
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2
刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3
刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。



悪魔くん、今日は日本国憲法第37条について話そう!
まずはさ、意訳してみてよ



刑事事件で訴えられたヤツには、ちゃんと公平で早めの裁判を受ける権利があるってことだ。
コソコソやるんじゃなくて、公開の場でやれよって話な。
それから、証人がいたら、そいつに質問するチャンスもちゃんとくれよな。
場合によっちゃ、無理やり裁判所に呼び出してもOKだし、その費用は国が出すってさ。
あと、弁護士な。
どんなときでも弁護士を頼める。
もし自分で雇えないなら、国がつけてくれるってわけだ。



うんうん、いいね!



なぁ、この37条ってさ、なんか被告人にやさしすぎじゃね?
公平な裁判だの、弁護士つけられるだの、税金で証人呼ぶだの…。
悪いことしたヤツに、そこまで気を使う必要あんのかよ?



ふふっ、悪魔くんらしいね。
でもね、この条文は悪いことをした人のためというよりは、
まだ本当に悪いかどうかわからない人のためにあるんだよ。



へ?
でも起訴されたってことは、もう怪しいんじゃねぇの?



「怪しい」と「有罪が確定した」はまったく別ものなんだよ。
たとえばさ、誰かが「あの人よ!悪魔って人がやったのよ!」って言ったら、それが本当かどうか悪魔くんにもなんにも確認しないまま罰するなんて、おかしいと思わない?



え?いやいや、それは怖いよ!
言ったもん勝ちじゃないか!
いくら俺のことが嫌いだからって…
ああ、そうか、わかったよ。確かにヤバいよな…



でしょ?
だからこそ、
・ちゃんと公平な裁判を開いて
・その人の言い分も聞いて
・証拠もきちんと見てから判断しよう
っていうルールが必要なんだ。
それがこの第37条ってことさ。



でもよ、公平ってどうやって決めるんだ?
俺を訴えた人とかの知り合いが裁判官だったら?



いいところに気づいたね!
たとえば、裁判官が事件の被害者の親だったり、被告人の友達だったりしたら、判断が偏っちゃう可能性があるでしょ?
そういうのを避けるために、どちらにも関わりのない、ちゃんと中立な裁判官が裁くことが求められてるんだよ。



ちょっと安心してきたぞ。
そうだ、「迅速な公開裁判」ってあるけど、裁判ってめっちゃ時間かかるイメージだぞ?



確かに、長くかかる裁判もあるね。
ここで言う「迅速」っていうのは、必要以上に引き延ばしちゃダメだよって意味なんだ。
昔、15年も裁判が止まってた例があったけど、それじゃあ被告人の人生がメチャクチャになっちゃうでしょ?



そういう意味か。
内容によっては時間がかかるかもしれないけどさ、
無意味に延ばされたらたまったもんじゃないもんな。
しかもそれが冤罪だったらなおさらだよな。



そうそう。
そして「公開」にしてるのは、こっそり裁判をして国民が何も知らないうちに勝手に判決を下すようなことを防ぐため。
“裁判の様子は誰でも見られる状態でやるべきだってことだね!



で、証人に質問できるとか、国の金で呼び出せるってのも…
まあ、わかる気はする。
でもさ、弁護士を国がつけるとか、そこまでしてやらなきゃダメか?



うん、それがすごく大事なんだよ。
検察官や裁判官は「法律のプロ」だよね。
でも、被告人の多くは「法律の素人」じゃん?
悪魔くんだってそうだよね?
プロと素人が一対一で戦ったら、
本当は無罪でも負けちゃう可能性があるよね?



……たしかに。俺も勝てる気がしねぇ…
それで無実のやつが刑務所行きとか、最悪だな。



でしょ?だからこそ、弁護士をつける権利がある。
そして、お金がない人のためには国がつけてくれる。
そうやって誰もがちゃんと土俵で戦えるようにするのが、この条文の本当の目的なんだ。



なるほどな…。
「まだ本当に悪いって決まってない人を守ってる」
って意味がわかったよ。



疑わしきは罰せずって言葉もあるように、
冤罪を防ぐことこそが、本当に正しい裁判の第一歩ってことだね♪
まとめ
私たちにとっても、この憲法第37条はけっして他人事じゃないんです。
たとえば、
・本当はやっていないのに疑われた
・言いたいことがあるのに法律がわからない
・相手はプロばかりで、太刀打ちできない
そんなときでも、ちゃんと裁判を受けられる。
自分の言葉で反論できる。
そして、力を貸してくれる弁護士がいる。
それが当たり前だと思えるのは、憲法でちゃんと約束されているからなんです。



もしこの条文がなかったら、力のある側の言い分だけで、誰かが不当に罰されたり、人生を奪われたりしてしまうかもしれない。
だからこそ、裁判の「公平さ」や「迅速さ」って、社会の最後の良心みたいなものなのかもね。

