こちらは日本国憲法第89条の解説記事です。
この第89条が伝えたいポイントというのは……
具体的にはどういうことなのか?
そして、自民党が推し進めようとしている改憲草案の中身は?
その問題点とは?そういった解説・考察をしています。
ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです!
日本国憲法第89条【公の財産の用途制限】
意訳
原文
日本国憲法第89条を更に深堀してみよう
要点①:宗教団体に関して
日本国憲法第20条にて政教分離が謳われています。
この第89条も、この第20条に則って規定されました。
日本国憲法第20条にて政教分離が謳われています。この第89条も、この第20条に則って規定されました。
※政教分離
いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を 行使してはならないということ。
国は、宗教に関しては中立の立場でいなければならないし、政治と絡めてもいけないのです。
※政教分離
いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を 行使してはならないということ。国は、宗教に関しては中立の立場でいなければならないし、政治と絡めてもいけないのです。
要点②:教育に関して
国立・公立の学校は「国に属している機関」なので、国民の税金が助成金として援助されています。
そして、実は私立の学校にも援助がされています。
ゆえに「憲法違反ではないか?」とも言われています。
さらに、学校によっては宗教法人が運営しているので
「宗教・私学と2重に憲法違反では?」
という疑問もくすぶっています。
この件に関する見解としては、
1969年の参議院文教委員会における文部省(現・文部科学省)の担当局長の説明が参考となります。
国立・公立の学校は「国に属している機関」なので、国民の税金が助成金として援助されています。そして、実は私立の学校にも援助がされています。
ゆえに「憲法違反ではないか?」とも言われています。さらに、学校によっては宗教法人が運営しているので「宗教・私学と2重に憲法違反では?」という疑問もくすぶっています。
この件に関する見解としては、1969年の参議院文教委員会における文部省(現・文部科学省)の担当局長の説明が参考となります。
私立学校の設置や配置、教職員の資格、教育内容等については公の規制がある。
また、私立学校の設置主体である学校法人についても規制がある。
だから私立学校とはいえ「公の支配に属している」ものだ。
私立学校の設置や配置、教職員の資格、教育内容等については公の規制がある。また、私立学校の設置主体である学校法人についても規制がある。だから私立学校とはいえ「公の支配に属している」ものだ。
また、裁判の判決でも、以下のような解釈をして「違憲ではない」としています。
人事や事業予算に、国が直接関与しているわけではない。
業務や会計の状況に関して報告を徴したり、
予算について必要な変更をすべき旨を勧告する程度の監督権しかないという
「緩やかな」支配程度であるため、私学助成に関しては違憲ではないと判断する。
無償譲渡契約や公金による寄付は違憲扱いとしている。
人事や事業予算に、国が直接関与しているわけではない。
業務や会計の状況に関して報告を徴したり、予算について必要な変更をすべき旨を勧告する程度の監督権しかないという「緩やかな」支配程度であるため、私学助成に関しては違憲ではないと判断する。
無償譲渡契約や公金による寄付は違憲扱いとしている。
かつ、第26条での等しく教育を受ける権利もあるということから、
私学助成は憲法違反ではないというのが、現在における解釈とのことです。
あくまでも、規則に則った「助成」をするのみであり、
国側は口出しはしないから、違憲ではないということです。
かつ、第26条での等しく教育を受ける権利もあるということから、私学助成は憲法違反ではないというのが、現在における解釈とのことです。
あくまでも、規則に則った「助成」をするのみであり、国側は口出しはしないから、違憲ではないということです。
この第89条の改憲草案はどんな内容?
自民党はこの第89条をどのように改憲しようとしているのでしょうか。
そして、その問題点とは?
簡単にいうと、以下の通りです。
改憲草案の原文を紹介します。そして具体的に考察もしてみました
改憲草案原文:第89条
※赤文字が変更箇所です。
自民党による言い分
解釈上、私立学校においても、その設立や教育内容について、
国や地方公共団体の一定の関与を受けていることから、
「公の支配」に属しており、私学助成は違憲ではないと考えられています。
しかし、私立学校の建学の精神に照らして考えると、
「公の支配」に属するというのは、適切な表現ではありません。
そこで、憲法の条文を改め、「公の支配に属しない」の文言を、国等の「監督が及ばない」にしました。
なお、党内の議論では、更に
「教育に対する公金支出の制限の規定は、教育の重要性を考えると、おかしいのではないか。」
という意見がありました。
しかし、朝鮮学校で反日的な教育が行われている現状やこれまでの判例の積み重ねもあり、
基本的には現行規定を残すこととしました。
(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)
解釈上、私立学校においても、その設立や教育内容について、国や地方公共団体の一定の関与を受けていることから、「公の支配」に属しており、私学助成は違憲ではないと考えられています。
しかし、私立学校の建学の精神に照らして考えると、「公の支配」に属するというのは、適切な表現ではありません。そこで、憲法の条文を改め、「公の支配に属しない」の文言を、国等の「監督が及ばない」にしました。
なお、党内の議論では、更に「教育に対する公金支出の制限の規定は、教育の重要性を考えると、おかしいのではないか。」
という意見がありました。しかし、朝鮮学校で反日的な教育が行われている現状やこれまでの判例の積み重ねもあり、基本的には現行規定を残すこととしました。
(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)
改憲草案の問題点①:言葉の定義をやり直さねばならない
「公の支配に属しない」という文言を「監督が及ばない」に変える。
それだけでも、その定義をやり直さなければならなくなります。
監督とはなんなのか?どの範囲のことをいうのか?と。
自民党は「公の支配は適切な表現ではない」と言っていますが、
それを理由にするのであれば、「監督」等と更に曖昧な言葉を使うのではなく、
定義を明確に定めた内容・言葉を入れ込むべきだと思います。
そうしなかったところを見るに、「拡大解釈しやすい言葉」にし、
何かが起きた時に、その都度のらりくらりと逃げるつもりなのでしょうか。
さらに、自民党がやってきた「森友学園」「加計学園」等に対する私学助成の問題。
このこともあり、自民党の「監督」が拡大解釈されるおそれの方が大きいと考えて、まず間違いないでしょう。
そう、例えば「〇〇の監督をしているのは国または地方自治体だから、この便宜は違法ではない」という
言い訳がまかり通る可能性が高くなるわけです。
つまり、自民党と懇意にある私学や宗教団体等に対して、
公金や財産を支出しやすくなることが考えられる改正です。
これは「お金を出す」だけで終わるはずはなく、「中身」にも堂々と口出ししてくるようになるでしょう。
「公の支配に属しない」という文言を「監督が及ばない」に変える。それだけでも、その定義をやり直さなければならなくなります。監督とはなんなのか?どの範囲のことをいうのか?と。
自民党は「公の支配は適切な表現ではない」と言っていますが、それを理由にするのであれば、「監督」等と更に曖昧な言葉を使うのではなく、定義を明確に定めた内容・言葉を入れ込むべきだと思います。
そうしなかったところを見るに、「拡大解釈しやすい言葉」にし、何かが起きた時に、その都度のらりくらりと逃げるつもりなのでしょうか。
さらに、自民党がやってきた「森友学園」「加計学園」等に対する私学助成の問題。このこともあり、自民党の「監督」が拡大解釈されるおそれの方が大きいと考えて、まず間違いないでしょう。
そう、例えば「〇〇の監督をしているのは国または地方自治体だから、この便宜は違法ではない」という言い訳がまかり通る可能性が高くなるわけです。
つまり、自民党と懇意にある私学や宗教団体等に対して、公金や財産を支出しやすくなることが考えられる改正です。これは「お金を出す」だけで終わるはずはなく、「中身」にも堂々と口出ししてくるようになるでしょう。
2016年、近畿財務局が学校法人「森友学園」に対して、大阪府豊中市の国有地を小学校の建設用地として
鑑定価格より大幅に安く売却した事件です。
具体的には、鑑定価格9億5,600万円のところを、約8億円も値引きした1億3,400万円で払下げました。
2016年、近畿財務局が学校法人「森友学園」に対して、大阪府豊中市の国有地を小学校の建設用地として鑑定価格より大幅に安く売却した事件です。具体的には、鑑定価格9億5,600万円のところを、約8億円も値引きした1億3,400万円で払下げました。
過去52年間どこの大学でも認可されなかった獣医学部を新設する「国家戦略特区」の事業者に
加計学園が選定されました。理事が当時の首相であった安倍氏と仲が良かったことや、
国家戦略特区も安倍内閣が選んだものであることから、便宜を図ったのではないかという疑惑があります。
過去52年間どこの大学でも認可されなかった獣医学部を新設する「国家戦略特区」の事業者に加計学園が選定されました。理事が当時の首相であった安倍氏と仲が良かったことや、国家戦略特区も安倍内閣が選んだものであることから、便宜を図ったのではないかという疑惑があります。
書類改ざんもあったり、お得意の「記憶にございません」発言等でのらりくらり逃げられています。
2022年12月時点、これらの疑惑はなお解消されていません。
書類改ざんもあったり、お得意の「記憶にございません」発言等でのらりくらり逃げられています。2022年12月時点、これらの疑惑はなお解消されていません。
改正草案の問題点②:在日外国人への差別の増長のおそれ
改正理由の1つとして「 朝鮮学校で反日的な教育が行われている」と名指しでわざわざ書いてきています。
これはどう考えても、朝鮮学校への助成を禁ずることを目的としていることが明らかです。
朝鮮学校への助成における「公の支配」の解釈は、過去の判例や先例で認められてきた事実があります。
それならば、自民党改憲草案においても朝鮮学校への助成も認められなければなりません。
そうしなければ「適切な表現ではない」云々の言い訳と矛盾しているからです。
そこをあえて、わざわざ出してきたということから、
「朝鮮学校への助成を禁じたい」という意図が明確であることは否めません。
改正理由の1つとして「 朝鮮学校で反日的な教育が行われている」と名指しでわざわざ書いてきています。
これはどう考えても、朝鮮学校への助成を禁ずることを目的としていることが明らかです。朝鮮学校への助成における「公の支配」の解釈は、過去の判例や先例で認められてきた事実があります。それならば、自民党改憲草案においても朝鮮学校への助成も認められなければなりません。
そうしなければ「適切な表現ではない」云々の言い訳と矛盾しているからです。
そこをあえて、わざわざ出してきたということから、「朝鮮学校への助成を禁じたい」という意図が明確であることは否めません。
改正草案の問題点④:靖国神社参拝が「合憲」になってしまう
第20条第3項にて定められているように、政治的なことを宗教と絡めてはいけません。
政治はあくまでも「中立の立場」を取らなければならず、特定の宗教に肩入れをすることを禁じられています。
それが「政教分離の原則」です。
ですが、改憲草案では
「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りではない。」
と追記されています。
つまり、靖国神社参拝の合憲を目論んでいるわけです。
玉串料等の名目で公金を奉納したとしても、
「社会的儀礼・習俗的行為の範囲だから合憲である」と認めさせることも可能となってしまいます。
公金を奉納する、つまり靖国神社と国とのつながりが綿密になるということです。
これは完全に「政教分離の原則」から逸脱しています。
第20条第3項にて定められているように、政治的なことを宗教と絡めてはいけません。政治はあくまでも「中立の立場」を取らなければならず、特定の宗教に肩入れをすることを禁じられています。それが「政教分離の原則」です。
ですが、改憲草案では「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りではない。」と追記されています。
つまり、靖国神社参拝の合憲を目論んでいるわけです。
玉串料等の名目で公金を奉納したとしても、「社会的儀礼・習俗的行為の範囲だから合憲である」と認めさせることも可能となってしまいます。
公金を奉納する、つまり靖国神社と国とのつながりが綿密になるということです。
これは完全に「政教分離の原則」から逸脱しています。
戦争犯罪の正当化・歴史修正主義が表に出ている改正案でもある
靖国神社はA級戦犯が合祀されています。
そこへ「国が参拝する」ことがどういうことなのか。
それはつまり「戦争の肯定」であり「正当化」でしょう。
そういったメッセージを、日本だけではなく世界中に向けて発することになってしまいます。
靖国神社はA級戦犯が合祀されています。そこへ「国が参拝する」ことがどういうことなのか。
それはつまり「戦争の肯定」であり「正当化」でしょう。そういったメッセージを、日本だけではなく世界中に向けて発することになってしまいます。
改正草案の問題点⑤:特定の宗教が政界に対して影響を与える懸念
政教分離の原則を無くした場合に考えられる懸念はもう1つあります。
それは、政治家からの公金による寄付や援助が、宗教団体の財政基盤となることです。
その基盤が強固になればなるほど、宗教団体の政界へ及ぼす影響も大きなものとなっていきます。
宗教団体の権威が国に利用されればされるほど、
または逆に宗教団体が国を利用して世論を操作しようとすればするほど、
日本は民主主義から遠くなっていくでしょう。
そしてそれは、かつての軍国主義だった日本へ逆戻りする危険性をはらんでいることにもなります。
現実的に、2022年、統一教会と自民党が深い関係であることが露見しました。
そして、この改憲草案の中身も、統一教会の教義に限りなく似ているということもわかりました。
今はまだ「日本国憲法」であるため、統一教会を問い詰めることができますが、
もし改憲されたら、難しくなるかもしれません。
このように、ものすごく危険なことなのです。
政教分離の原則を無くした場合に考えられる懸念はもう1つあります。
それは、政治家からの公金による寄付や援助が、宗教団体の財政基盤となることです。その基盤が強固になればなるほど、宗教団体の政界へ及ぼす影響も大きなものとなっていきます。
宗教団体の権威が国に利用されればされるほど、または逆に宗教団体が国を利用して世論を操作しようとすればするほど、日本は民主主義から遠くなっていくでしょう。
そしてそれは、かつての軍国主義だった日本へ逆戻りする危険性をはらんでいることにもなります。
現実的に、2022年、統一教会と自民党が深い関係であることが露見しました。そして、この改憲草案の中身も、統一教会の教義に限りなく似ているということもわかりました。今はまだ「日本国憲法」であるため、統一教会を問い詰めることができますが、もし改憲されたら、難しくなるかもしれません。
このように、ものすごく危険なことなのです。
現憲法をもう一度読む
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
後記
このように、国のお金の使い道は宗教や教育に関してもしっかり憲法にて定められています。
(ですので、公明党はもちろんのこと、統一教会と深い関係になった議員たち……
主に自民党も、存在そのものが憲法違反なのです、本当は。
そういった団体からの多大な支援を得て、当選してきているわけですから。)
差別主義者・軍国主義者がが堂々と「合憲である」と言える日本にしたいのだろうということが、
この条文だけではなく改正草案全体からも読みとれます。
このように、国のお金の使い道は宗教や教育に関してもしっかり憲法にて定められています。
(ですので、公明党はもちろんのこと、統一教会と深い関係になった議員たち……主に自民党も、存在そのものが憲法違反なのです、本当は。ういった団体からの多大な支援を得て、当選してきているわけですから。)
差別主義者・軍国主義者がが堂々と「合憲である」と言える日本にしたいのだろうということが、この条文だけではなく改正草案全体からも読みとれます。
繋がりのある条文
この第89条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
この第89条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
最後まで読んでくださってありがとうございました!