【日本国憲法第90条の解説】会計検査、本来は内部告発の役目を果たすもの

こちらは日本国憲法第90条の解説記事です。

前編・後編の2部構成としています。
基本的には前編だけでも、その条文の伝えたいこと、
自民党提案の改正草案の中身(問題点)がわかるようにしています。
まずは前編でも是非読んでいただけたら嬉しいです。

更に深堀した内容は後編に書いていますので、
興味のある方は最後まで是非。

目次

前編:日本国憲法第90条【会計検査】

意訳

国の収入や支出が適切に行われてるかどうかは、会計検査院が毎年すべてチェックする。
その結果は、翌年度の国会にて、内閣が報告しなければならない。
なお、その会計検査院の組織体制や権限ついては、別途法律(会計検査院法)にて定めるものとする。

原文

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

2
会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

この第90条が伝えたいポイント

予算を作成するのは内閣です。
そして、その予算が予算が適切かつ有効に使われたかどうかを、会計検査院がチェックしています。
そんな会計検査院は内閣から独立した組織です。

自民党による改正草案について

何をどう変えようとしている?

語順を並び替え、主語を会計検査院から内閣に変更しました。
また、「法律の定めるところにより」という一文を追加しています。

問題点は?

この変更により、会計検査院の権限と独立性を弱めようとしています。
また、会計検査院の検査を受けるのが「内閣関連」のみと解釈される余地がでてきています。

前編はここまでです。後編では更に詳しく解説していますので、興味のある方はよかったら是非!ちなみに、改正草案の原文も後編の方で記載しています。
この第90条と繋がりのある条文記事も是非!記事下にあります➡繋がりのある条文を見る

後編:日本国憲法第90条を更に深堀してみよう

要点①:会計検査院の仕事について

まず、予算は内閣が作成し、国会の議決を経て成立します。(⇒第86条

そうして予算が決まりますが、
それらが適切に使われているかどうかをチェックする組織はやはり必要です。

その役目を担っているのが「会計検査院」です。
この会計検査院もまた他の政府機関から独立した組織であり、干渉を受けることはありません。

そんな会計検査院の仕事は大体以下の通りです。

  • 官公庁の決算の検査
  • 国が補助金等で財政援助している独立行政法人等に対する検査
  • 検査結果を報告書としてまとめる
  • 報告、指摘

不正だけではなく、無駄遣いについてもどんどん指摘しています。
また、「金額」に対してだけではなく、
事業案に対しても改善や策定、見直しの進言も行っています。

不正だけではなく、無駄遣いについてもどんどん指摘しています。また、「金額」に対してだけではなく、事業案に対しても改善や策定、見直しの進言も行っています。

要点②:内部告発も受け付けている

会計検査院はサイト上にて情報提供を受け付けています。
いわゆる内部告発もです。

会計検査に関する情報を受け付けております。

会計検査院の検査対象である国や国が資本金を出資している法人、国から補助金を受けている都道府県・市町村・その他の団体などの事務・事業や会計経理について、不適切、不経済、非効率、効果不十分などと思われる事態がございましたら、情報をお寄せください。会計検査の参考とさせていただきます。

会計検査院のウェブサイトより

改正草案原文:第90条

※赤文字が変更箇所です

内閣は、国の収入支出の決算について、全て毎年会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、次の年度にその検査報告とともに、両議院に提出し、その承認を受けなければならない。

2
会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。

3(新設)
内閣は、第一項の検査報告の内容を予算案に反映させ、国会に対し、その結果について報告しなければならない。

改正草案の問題点①:検査対象が「内閣だけ」になりかねない

現憲法では、主語が会計検査院であるうえに、検査対象を「国全体」としています。

このことによって、内閣だけではなく国会や裁判所はもちろんのこと、
各官公庁等、国に関するあらゆる機関に対して直接検査を行うことができるのです。

現憲法では、主語が会計検査院であるうえに、検査対象を「国全体」としています。

このことによって、内閣だけではなく国会や裁判所はもちろんのこと、各官公庁等、国に関するあらゆる機関に対して直接検査を行うことができるのです。

ところが、改正草案では「内閣」を主語にしました。

内閣は、国の収入支出の決算について、全て毎年会計検査院の検査を受け~ 」

このことにより、「会計検査院の検査を受けるのは内閣だけ」という解釈が成り立ってしまいます。

これは、検査対象が「内閣絡みのみ」とされるだけではなく、
国会や裁判所、官公庁等に関しては「内閣を通した間接的な検査」しかできなくなる、
そんな可能性も出てくるのです。

これは、検査対象が「内閣絡みのみ」とされるだけではなく、国会や裁判所、官公庁等に関しては「内閣を通した間接的な検査」しかできなくなる、そんな可能性も出てくるのです。

改正草案の問題点②:検査範囲が「法律の範囲」に限定されてしまう

現憲法においては、検査の範囲や方法・手段は会計検査院の独自の判断や選択にゆだねられています。
他の国家機関から干渉を受けるようなことはありません。
※独自の判断や選択等が記載されているのが会計検査院法です。いわばマニュアルみたいなものですね。

現憲法においては、検査の範囲や方法・手段は会計検査院の独自の判断や選択にゆだねられています。他の国家機関から干渉を受けるようなことはありません。
※独自の判断や選択等が記載されているのが会計検査院法です。いわばマニュアルみたいなものですね。

ですが、改正草案では憲法上に「法律の定めるところにより」と入れてきました。

このことにより、
「法律によって定められた範囲で、定められた行動しかとれない」
ことになってしまいます。

このことにより、
「法律によって定められた範囲で、定められた行動しかとれない」ことになってしまいます。

つまり、「与党が作った法律」に沿った検査・報告内容のみを受け付けるということになりかねないでしょう。
「●●については調査しない」という法律ができてしまえば、それに従わざるを得なくなります。
憲法にて「法律の定めるところにより」と規定されているのですから。

つまり、「与党が作った法律」に沿った検査・報告内容のみを受け付けるということになりかねないでしょう。
「●●については調査しない」という法律ができてしまえば、それに従わざるを得なくなります。憲法にて「法律の定めるところにより」と規定されているのですから。

後記

改正草案も語順等をしっかり読んでいくと、会計検査院の権限と独立性を弱めようとしているのが見えてきます。
このことにより、不正はもちろんのこと、無制約な予算を通しやすくなってしまいます。

その結果はおそらく、今以上に軍事費に重きが置かれたり、
自民党が今以上に着服したりする社会として出てくるのだろうと思います。

その結果はおそらく、今以上に軍事費に重きが置かれたり、自民党が今以上に着服したりする社会として出てくるのだろうと思います。

そうそう、会計検査院の報告書を読んでみると、

「計画が適切でなかった」
「事業の目的を果たしていない」
「契約額が割高である」

等々、なかなか色々な無駄遣いに関する指摘が入っていることがわかります。
また、事業案の仕組みの改善等の進言も行っている組織なので、
独立性を保ちつつ、もっともっと頑張っていただきたいです。

等々、なかなか色々な無駄遣いに関する指摘が入っていることがわかります。
また、事業案の仕組みの改善等の進言も行っている組織なので、独立性を保ちつつ、もっともっと頑張っていただきたいです。

この第90条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

最後まで読んでくださってありがとうございました!
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