【憲法第92条の解説】地方公共団体のルールの決め方について

こちらは日本国憲法第92条の解説記事です。

前編・後編の2部構成としています。
基本的には前編だけでも、その条文の伝えたいこと、
自民党提案の改正草案の中身(問題点)がわかるようにしています。
まずは前編でも是非読んでいただけたら嬉しいです。

更に深堀した内容は後編に書いていますので、
興味のある方は最後まで是非。

目次

前編:日本国憲法第92条【地方自治の本旨の確保】

意訳

地方公共団体、つまり都道府県・市区町村を、どんな人たちでどのように運営していくのかというのは法律で決めていくものとする。

原文

地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

この第92条が伝えたいポイント

地方自治は住民達の主体的な意思に基づいて行われる。また、国から独立したものである。

自民党による改正草案について

何をどう変えようとしている?

現在、地方自治における住民は「主権者」である。
それを「参画者」に変えようと

問題点は?

「参画」とは、「主権は別にあり、そこに参加する」という意味である。
つまり、住民から主権を奪うことを目的とした改正。
現憲法では「国と地方自治は対等な関係」だが、それを壊そうとしている。

前編はここまでです。後編では更に詳しく解説していますので、興味のある方はよかったら是非!ちなみに、改正草案の原文も後編の方で記載しています。
この第92条と繋がりのある条文記事も是非!記事下にあります➡繋がりのある条文を見る

後編:日本国憲法第92条を更に深堀してみよう

要点①:地方自治の「本旨」とは

原文に「本旨」とあります。
この憲法においては「本来あるべき姿」「理想」といった意味で使われています。
(国語辞典では「本当の目的、本来の考え」となっています)

具体的には、下記の図のようなことだと言われています。

地方自治の本旨
①住民自治
住民達が自分自身の意思に基づき、責任をもって地方自治を行っていくこと。→民主主義的要素
②団体自治
国(中央政府)から独立して、住民たちの自由を保障すること。
➡自由主義的要素

「住民が主体的に自分たちの自治体を運営し、国から独立した意思決定を行う」

このことを憲法では認めていると解釈されています。
よって、国といった中央政府(国会・内閣・裁判所)と地方自治は、実は対等な関係です。
決して、国>地方自治体ではありません。

要点②:地方自治体ができること

要点①で説明した通り、国と地方自治体は対等な関係です。

とはいえ、地方自治体が「日本とは違う新しい国である」かのように独立することはできません。
あくまでも、「憲法で定めた法律の範囲内」での独立です。

ですので、日本国内共通事項である法律に逆らった条例を作るということは、
基本的にはできません。

例えば、

  • 我が地域においては、自動車は右側運行とする!
  • 我が地域においては、10歳になったら飲酒可とする!

一方で法律で定められていない、もしくは法律の範囲内である条例であれば規定できます。
「路上喫煙禁止条例」のように。

※2020年4月1日、改正健康増進法により受動喫煙防止に対する取り組み進みましたが、路上喫煙禁止に関しては法律ではまだ規定されていません。

改正草案原文:第92条・第93条

※赤文字が変更箇所です

第92条(新設)
地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。

2
住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を行う

第93条
地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。

2
地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治体の本旨に基づいて、法律で定める。

3
国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない。

自民党による言い分

従来「地方自治の本旨」という文言が無定義で用いられていたため、この条文において明確化を図りました。また、自治の精神をより明確化するため、これまで「地方公共団体」とされてきたものを、一般に用いられている「地方自治体」という用語に改めました。

(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)

改正草案の問題点①:住民を「主権者」から「参画者」へ

新設された第92条には、見逃せない言葉が入っています。
それが「住民の参画」という言葉です。

現憲法上においては、地方自治体の主権者は「住民」です。
それを変えようとしていることが明確になっています。

ここで、言葉の意味を。
「参画」とは、「主権は別にあり、そこに参加する」という意味です。

つまり、住民から主権を奪い、あくまでも「参画者である」と定めようとしているわけです。
では、その主権はどこになるのでしょう?
国や行政組織、となるでしょうね。それ以外にはありません。
「国と地方自治体は対等」という今の関係を壊しにかかってきているということです。

改正草案の問題点②:地方自治体の自由度を狭めるもの

「地方自治」の自由度を下げてきている

新設された第92条に「住民に身近な行政」という文言も入れてきました。
また、第93条にて「(地方自治体の)種類は法律で定める」とも言っています。

これは、憲法による「地方自治」を限定的なものとすることを目的としているものと思われます。

現憲法では地方自治体の独立を認めています。
それは言い換えれば「自由度が高い」ことにもなります。

そういった自由をできる限り奪いたいという考えから出された改正案であろうと推察します。

地方自治同士の相互監視のおそれがある

また、国と地方自治体は相互に協力しなければならない、という文言も入れてきました。
加えて、地方自治体同士も協力しなければならない、とも。

なぜ、わざわざ入れてきたのでしょうか。

自民党はその理由として東日本大震災のことを挙げています。

3 項では、東日本大震災の教訓に基づき、「国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない。」と規定し、国と地方自治体間、地方自治体同士の協力について定めました。

(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)

本音はおそらく違います。
「協力という名の命令」に従わせやすいように変えていきたいのでしょう。
そして、思い通りに操縦できなかった時は「協力してくれない」と地方自治を批判しやすくしたいのだろうと推察します。

また、地方自治体同士の協力も憲法にて求めることによってどういうことが起きるでしょうか。

それは協力という名の相互監視です。

自民党が声高に叫んでいる「自助」そしてコロナ禍における動きをみると……言わずもがなですね。

後記

実は、大日本帝国憲法(明治憲法)では地方自治に関する記載はありませんでした。

ですが、現日本国憲法ではわざわざ「第8章 地方自治」と独立した章を設けています。
そしてこの章はたったの4条しかありません。

必要事項だけ憲法で定め、あとは法律に任せることによって地方自治の独立を認めたのだと解釈されています。

そのうえで、改めて国の地方自治に対する態度を考えてみますと。

一番わかりやすい例が「沖縄」です。

沖縄の米軍基地にまつわる住民達の意思を無視したり、国が押し付けているという現状。
そんな国の沖縄県に対する扱いは、明らかな憲法違反です。

あくまでも、国と地方自治は対等な関係です。
だからこそ、自民党はこの「第8章 地方自治」のところにもたくさん手を入れてきました。
「参画」「協力」なんて言葉を入れることにより、国>地方自治という構図を作ろうとしています。

確かに、地方で策定される条例が問題になることもあります。
法律を超えている等のように。
最近でいえば、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例のような、人権侵害にも等しいものができたり。

でもそれはそれとして、その条例自体だけを問題視し、適切かどうか問えばいいのです。
提案した議員に対しても、リコールや訴訟を起こすこともできます。

地方自治の問題はあくまでもその「地方自治の問題」です。
政府の意向を拝む必要はありません。
マスコミが内閣や各省のお偉いさんに質問しに行って「俺は聞いていない」という答えを得る必要もありません。

この第92条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

最後まで読んでくださってありがとうございました!
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