【憲法第94条の解説】地方自治における団体自治・条例制定について

こちらは日本国憲法第94条の解説記事です。

前編・後編の2部構成としています。
基本的には前編だけでも、その条文の伝えたいこと、
自民党提案の改正草案の中身(問題点)がわかるようにしています。
まずは前編でも是非読んでいただけたら嬉しいです。

更に深堀した内容は後編に書いていますので、
興味のある方は最後まで是非。

目次

前編:日本国憲法第94条【地方公共団体の権能】

意訳

地方自治体は、財政・行政を行う権利がある。
また、法律の範囲内であれば条例を作ることもできる。

原文

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

※権能(けんのう)……法律上、ある事柄について権利を主張し、行使できる能力。ある物事をすることのできる資格。

この第94条が伝えたいポイント

地方自治体はもまた独立した自治体である。
つまり、国が国民全体にやっているようなことを、地方自治体が住民に対して行うことを認めている(団体自治)
かつ、法律に違反しない範囲で条例を定めることができる。

自民党による改正草案について

何をどう変えようとしている?

現憲法にある「財政の管理」「行政の執行」という文言が削除されました。

問題点は?

国の言うとおりに「事務処理だけをやっていなさい」というのが改正草案の内容です。

現憲法では、国と地方自治体は対等な関係です。
それを、財政・行政の権利を奪うことにより、上限関係を作ろうとしてきています。

前編はここまでです。後編では更に詳しく解説していますので、興味のある方はよかったら是非!ちなみに、改正草案の原文も後編の方で記載しています。
この第94条と繋がりのある条文記事も是非!記事下にあります➡繋がりのある条文を見る

後編:日本国憲法第94条を更に深堀してみよう

要点①:団体自治について

第92条にて「住民自治」と「団体自治」が地方自治の本旨だということを解説しています。
前条である第93条では「住民自治」について書かれていました。

そして、この第94条が「団体自治」です。
この条文にて、地方自治体は「事務処理」だけではなく、

  • 財産の管理(財政)
  • 行政

この二つも行う権利があると明記されています。

これは政府が国全体の国民に対して行っていることと同じように、
地方自治体も、自分の自治体の住民に対して財政・行政も行うことができますよ、ということです。

だからこそ、例えばコロナ禍において、
和歌山県や島根県、または墨田区のように国の意向を無視して
独自の対策を行うことができたりするのですね。

要点②:条例制定について

条例は地方自治体の自主立法とも言われています。

具体的に言えば、各都道府県・各市町村の議会においてそれぞれつくる決まり事のことです。
違反した場合の罰則も定めることができます。

この条例の効力が及ぶ範囲は、原則としてその条例を定めた自治体内のみとなっています。
なおかつ、その地域内であれば、住民でなくても効力は及びます。

(例)たばこポイ捨て禁止条例が定められているA市内において、
C市の人がポイ捨てをしたら、他の市の人であろうと当然罰せられる

ただし「法律に違反しない条例」であることが制定条件となっています。

この辺りは第92条の解説記事に書いていますが、ここでも新たな例を挙げてみます。
下記の例は、「法律違反なので、制定したらいけない条例」です。

(例)
法律では覚醒剤の所持や使用等を認めていないが、A自治体では条例にて認めるとする

制定可否の判断の難しい条例もある

  1. 法律で特別制限されていないことを条例で制限することはできるのか?
  2. 法律以上に厳しい罰則を科したり、規制を設けたりすることはできるのか?
  3. 憲法において「法律で定めるとする」とされている内容が、法律では具体的には定められていない
    →これを条例で具体的に定めることはできるのか?

こういったことは裁判にて判断されることが多いようです。
憲法違反になっていないかどうかも確認しつつ。

③は基本的に認められるみたいですが、①②はなかなか難しいとのこと。
ですが、一概に「NG」と判決されるわけでもありません。
地域の特殊性によっては、法律より厳しい条例を設けることが認められるケースもあるようです。
(例:公害に関する条例や、観光地における建築条例等)

改正草案原文:第95条・第96条

※赤文字が変更箇所です

第95条
地方自治体は、その財産を管理し、その事務を処理する権能を有し、及び行政を執行する権限を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

第96条(新設)
地方自治体の経費は、条例の定めるところにより課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。

2
国は、地方自治体において、前項の自主的な財源だけでは地方自治体の行うべき役務の提供ができないときは、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講じなければならない。

3
第83条第2項の規定は、地方自治について準用する。

自民党による言い分

あれこれ変えてきているにもかかわらず、

95条は、地方自治体の権能に関する規定です。地方自治体の条例が「法律の範囲内で」制定できることについては、変更しませんでした。
96条に地方自治体の財政に関する規定を新設しました。地方自治が自主的財源に基づいて運営されることなどを規定しました。

(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)

改正草案の問題点①:財政・行政の権利を奪っている

改正草案を見るに、 地方自治体から財政・行政の権利を奪い取ろうとしていることは明らかです。

現憲法では

「その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し」

と書かれています。
ですが、改正草案からは「財産を管理し」「行政を執行する権能を有し」という文言が
がっつり削除されています。
しかも、その理由さえ述べられていません。

ですが、現憲法における「国と地方自治の対等な関係」を壊し、
国の言いなりにさせようとしていることは確実です。

改正草案の問題点②:財源は「自助」にさせようとしている

新設された草案第96条では財源のことに触れています。

そのまま読めば、
「基本的には自助でなんとかしろ」
「そのために、条例で税率や課税できる内容を決められるようにしてやる
となります。

一応「地方交付税も自主財源にあたるものとする」と言っていますが、
国の政策に賛成しないなら~というような脅しに使おうとしています。
(すでにその面が出てきています。沖縄に対する仕打ちとか)

もし、この改正草案が通ると……

その地方自治体にいる住民達だけで財源を賄えることを基本としなければならなくなります。

ということは、地方税の税率があげられたり、
それとは別に新たな納税が課せられたりすることが十分に出てくるでしょう。

結果として、自治体ごとの格差がものすごく広がりかねません。
地域の崩壊にもつながることはもちろんのこと、憲法で定められているはずの
「すべて国民に保障されている色々な事柄(健康で文化的な生活を営む権利等)」等がなし崩しになってしまいます。

国の責任の完全放棄。
というよりは、国に逆らわないような仕組みつくりにしようとしている改正草案です。

後記

国と地方自治はあくまでも対等な関係だということを現憲法では認めています。

ですので、国はまず「国民」に対して、国民がどこの地方自治体に属そうとも
格差を感じることなく安心して生活できるようにすべきなんですよね。
そのうえで、地方自治体が知恵を絞って、地域の特性に応じて更に充実した政策を行うべきだと思います。

この第94条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

最後まで読んでくださってありがとうございました!
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