
たとえば、あなたが何も悪いことをしていないのに、ある日突然こんなことをされたら?
「お前だろ!白状しろ!」
「反省してないなら、もっと痛い目にあわせるぞ!」
そんなふうに、無理やり言うことを聞かせるために、気絶するまで殴られたり、食事もさせてもらえない・トイレにも行かせてもらえない…。
そんなこと、今の日本じゃありえないでしょ?…って思った?
でもね、それが当たり前だった時代があるんだ。
国家に逆らった、と思われた人は、拷問されたり命を奪われたりしていたんだよ。
そういったことを2度と起こさないための条文でもあるんだ。
これについて、天使くんと悪魔くんが話してくれているから、是非最後まで読んでいってね!
第36条【拷問及び残虐な刑罰の禁止】
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。



悪魔くん、今日は日本国憲法第36条について話そう!
まずはさ、意訳してみてよ



えーとつまりだな、役人(公務員)とかが人にムリヤリ痛いことしたり残酷な罰を与えるのは、絶対にダメってことだ。



うんうん、いいね!



いやいや、甘くね?
どんなに悪いやつでも、拷問も残酷な罰もダメなんでしょ?
しかも「絶対に」とかまで言い切っちゃってるし。
甘い甘い、甘すぎるぜ!



ううん、それくらいはっきり言わないといけないんだよ。
というのも、この憲法ができるまではとんでもないことが起きてたからなんだよ。
こういうことをもう繰り返さないためにもこの条文は必要なんだ。



実はね、「絶対に」って言葉はこの第36条にしかないんだよ。
それほど強い思いが込められてるってこと。



え、マジで?
過去に何があったっていうんだよ。



昔の日本、まぁ、この憲法ができるまでの日本。
戦前から戦中までの間が特に、と思ってくれていいんだけどね、
国に逆らうような考えを持っている人たち、
たとえば「戦争反対」「天皇の言うことは絶対じゃない」って言っただけで、警察に捕まって拷問されたり、無理やり自白させられたりしていたんだよ。
それも、警察が求めている答えになるまで、とかね。



いや、それは…さすがにやばくね?
でもそんなの、ごく一部の話だろ?
大袈裟に言っているだけだよな?



残念ながら、それが「普通」だった時代だよ。
*特別高等警察(特高)っていう組織があってね、それが日常的にそういうことをしてたんだ。
牢屋に閉じ込めて、暴力で「考え方」を変えさせる。
そんな時代だったんだよ…



考え方まで?!
…ってことは、たとえばだけどよ、
「俺は国家がいちばん大事だ!」「戦争賛成!」
って言うのは自由だけど、
「ちょっと国のやり方おかしくね?」
って言うのはダメだったってことか?



そうなんだよ。
つまり、国が気に入らない人を拷問して黙らせる社会だったんだよ。
だからこそ、その反省を踏まえて、「どんな理由があっても、絶対にやっちゃダメ!」って、しっかりストップをかけてるんだ。



はぁ…そうかぁ…。



まてよ、それなのにさ、最近また改憲とか言って、この条文から「絶対に」って言葉を削ろうとしてるって聞いたぞ?
本当なのか?



うん、残念だけど本当だよ。
「絶対に」と言う言葉をを外すことで、状況によっては拷問や残虐な刑罰もOKって感じになっちゃう。
昔のように戻ってしまう危険があるよね…



……でもな、敵のスパイとかテロリストとか、そういうやつから情報引き出すには…って思っちまうんだけどよ。



その気持ちはわかるけど、一度「仕方ない」「奥の手段だ」みたいなのを認めちゃうと、それがどんどん広がるんだ。
「一回だけ」が一回で終わるわけがないんだよ。
そうしたら、それは「何の犯罪も犯していないはずの普通の人」にまで範囲が広がる。
「あいつは国の方針に反対してる」
「秩序を乱してる」
ってね。
「戦争反対」とかさ、「お米の値段を下げろ」という言葉さえも、拷問や残虐な罰の対象になるかもしれないよ。
そうして、また普通の人にまで手が出るようになったら、再び止めるのは本当に難しいよ…



そっか…最初は本当に悪いやつのためだったはずなのに、いつのまにか自分たちにも降りかかるってことか。



でも死刑ってのはどうなんだ?
あれは残虐な刑罰じゃないのか?



そこもよく議論されるところだね。
今の日本では「絞首刑(首をつって死刑を執行する方法)」なんだけど、最高裁はそれを「残虐とはいえない」と判断している。
でも世界的には死刑そのものをやめる国が増えているから、日本も将来はどうなるかわからないけどね。



なるほどな…。
なんかこの条文ってさ、過去の地獄みたいな時代に二度と戻らないための命綱みたいだな。



「絶対にダメ」って、甘いって思ったけどさ、実はすごい重い言葉なんだな…



国に対してブレーキをかけてくれているからね。
これもやっぱり大切な条文だよね。
まとめ
この条文のすごいところは、ただ「禁止する」って書いてあるだけじゃないところです。
そう、「絶対に」禁止する」と強い言葉でしっかり書いているところ。
おかげで、どんな理由があろうとも、拷問も残虐な罰もできなくなったのです。



今の僕たちからしたら「そんなの当たり前じゃん」と思うかも。
でも、昔の日本ではそれが当たり前じゃなかったんだ。
だからこそ「もう二度と繰り返さないように」って願いを込めて、このルールができたんだよ。
それも、「絶対に」というすごく重い言葉も入れた。
ねぇ、憲法って、なんとなく遠い存在に思えるかもしれないね。
でも本当はあなたの心と体、そして命を守ってくれている盾みたいなものなんだ!

