こちらは日本国憲法第73条の解説記事です。
この第73条が伝えたいポイントというのは……
具体的にはどういうことなのか?
そして、自民党が推し進めようとしている改憲草案の中身は?
その問題点とは?そういった解説・考察をしています。
ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです!
日本国憲法第73条【内閣の職務制限】
意訳
原文
日本国憲法第73条を更に深堀してみよう
要点①:法律を誠実に実行し、国全体の仕事を見ること、とは?
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
まず、内閣は行政府です。
ですから、時の内閣または総理大臣にとっては納得のいかない法律であろうと、
まずは法律には誠実に従って、法律の目的にかなう政治を執行してください、
ということを義務付けているのです。
まず、内閣は行政府です。
ですから、時の内閣または総理大臣にとっては納得のいかない法律であろうと、まずは法律には誠実に従って、法律の目的にかなう政治を執行してください、ということを義務付けているのです。
要点②:条約締結はなぜ国会の承認を要するのか?
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
条約、それは各国との約束のことです。
そして、条約は法律よりも強い(優位的な)効力を持っています。
条約は、場合によっては国民の権利や義務にも直接かかわってくるものとなります。
そんな条約を内閣が勝手に締結してしまうことのないように、憲法上にて国会も関わることを明記しました。
一応、事後承諾も認められていますが、国会で否決されて相手国と揉めてしまう…なんてことのないよう、
事前に国会を通すことが一般的となっています。
条約、それは各国との約束のことです。そして、条約は法律よりも強い(優位的な)効力を持っています。
条約は、場合によっては国民の権利や義務にも直接かかわってくるものとなります。そんな条約を内閣が勝手に締結してしまうことのないように、憲法上にて国会も関わることを明記しました。
一応、事後承諾も認められていますが、国会で否決されて相手国と揉めてしまう…なんてことのないよう、事前に国会を通すことが一般的となっています。
要点③:予算提出について
五 予算を作成して国会に提出すること。
こちらはそのままですね。
詳しいことは第86条にて定められています。
リンクをここでも張りますが、最後の方にも改めてのリンクを紹介します。
要点④:政令には2種類ある
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。
但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
政令とは、内閣からの命令のことです。
つまり、内閣だけで、なんらかの決まり事をつくることができるということです。
ですが、内閣は立法府ではありませんよね。
そう、法律を作ることができるのは国会だけです。
ゆえに、内閣が定めることができるのはあくまでも「憲法や法律に則ったもの」でなければなりません。
さて、この政令ですが、執行命令と委任命令の2種類あります。
政令とは、内閣からの命令のことです。つまり、内閣だけで、なんらかの決まり事をつくることができるということです。
ですが、内閣は立法府ではありませんよね。そう、法律を作ることができるのは国会だけです。ゆえに、内閣が定めることができるのはあくまでも「憲法や法律に則ったもの」でなければなりません。
さて、この政令ですが、執行命令と委任命令の2種類あります。
- 執行命令
-
憲法や法律を遵守させるための命令。
執行するための細目を定めるため、実際に行政を行う内閣が定める。罰則を設けることはできない。 - 委任命令
-
法律に委任された事項を具体的に定める命令。
政令で内容を決めるように、と法律に最初から書かれている場合に制定。
なお、完全な白紙委任はできません。
つまり「無条件で全面的にお任せします」ということまた、られません。
(あくまでも立法権は国会にあるため)
また、このケースに限り、罰則を設けることができます。
- 執行命令
-
憲法や法律を遵守させるための命令。執行するための細目を定めるため、実際に行政を行う内閣が定める。罰則を設けることはできない。
- 委任命令
-
法律に委任された事項を具体的に定める命令。政令で内容を決めるように、と法律に最初から書かれている場合に制定。
なお、完全な白紙委任はできません。
つまり「無条件で全面的にお任せします」ということは認められません。(あくまでも立法権は国会にあるため)また、このケースに限り、罰則を設けることができます。
「法律を作るのは国会だけ」という大原則に従った政令でなければならない、ということです。
効力の順位
ちなみに、政令は4番目です。
憲法>条約>法律>政令>省令>条例
右に行けば行くほど順に効力が弱まっていきます。
■要点⑤:恩赦
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること」をひっくるめて「恩赦」と言います。
これに従い、恩赦法という法律もあります。
ここでは、この条文にある単語の説明をしていきます。
「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること」をひっくるめて「恩赦」と言います。これに従い、恩赦法という法律もあります。
ここでは、この条文にある単語の説明をしていきます。
- 大赦
-
一定の犯罪者全体について刑を消滅させるもの。
有罪判決が出た人は、その内容が無効となる。判決が出ていない人については公訴権が消滅する。
受刑者であれば刑務所から釈放されたり、警察からの捜査を受けている人は捜査の打ち切りになる。ありていに言えば「チャラにしてあげるよ」ということ。
恩赦の中でも特に大きな効力を持つ。 - 特赦
-
特定の犯罪者について刑を消滅させるもの。
特定の人に対して有罪判決を無効にする。これは有罪判決を受けていない人は対象外。 - 減刑
-
罪や刑の種類を軽くしたり、執行猶予の期間を短くしたりするもの。
- 刑の執行の免除
-
刑の執行の免除。社会復帰の促進のために行われることがある。
無期懲役の人は仮釈放となったり、保護観察中の人は保護観察が終了となる。 - 復権
-
有罪判決によって資格停止になったり資格の喪失をした人の資格の復権。
- 大赦
-
一定の犯罪者全体について刑を消滅させるもの。有罪判決が出た人は、その内容が無効となる。判決が出ていない人については公訴権が消滅する。受刑者であれば刑務所から釈放されたり、警察からの捜査を受けている人は捜査の打ち切りになる。
ありていに言えば「チャラにしてあげるよ」ということ。恩赦の中でも特に大きな効力を持つ。
- 特赦
-
特定の犯罪者について刑を消滅させるもの。特定の人に対して有罪判決を無効にする。これは有罪判決を受けていない人は対象外。
- 減刑
-
罪や刑の種類を軽くしたり、執行猶予の期間を短くしたりするもの。
- 刑の執行の免除
-
刑の執行の免除。社会復帰の促進のために行われることがある。無期懲役の人は仮釈放となったり、保護観察中の人は保護観察が終了となる。
- 復権
-
有罪判決によって資格停止になったり資格の喪失をした人の資格の復権。
この第73条の改憲草案はどんな内容?
自民党はこの第73条をどのように改憲しようとしているのでしょうか。
そして、その問題点とは?
簡単にいうと、以下の通りです。
改憲草案の原文を紹介します。そして具体的に考察もしてみました
改憲草案原文:第73条
※赤文字が変更箇所です。
改憲草案の問題点:基本的人権を制限することが可能となる
6番目には新たに追記された文章があります。
再掲します。赤文字で太文字になっている個所が、新たに追記されたところです。
六 この憲法及び法律の規定に基づき、政令を制定すること。
ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、
義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。
六 この憲法及び法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。
ここは、現憲法では「罰則を設けることができない」に留める程度でした。
改憲草案では「義務を課し、又は権利を制限する規定」に変わっています。
なんとなく読むと「設けることができない」とあるので、安心しそうになります。
ですが。
「政令には、その法律の委任がある場合を除いては」という文章も併記されています。
これが実は曲者なんですよね。
これは言い換えれば、
「該当する法律さえあれば、国民に義務を課し、権利を制限することができる」
ことになるわけです。
そして他の改正案とも当然繋がっていますから、そのことから考えると
間違いなく法律をすぐに整備し、国民の基本的人権を制限してこようとしてくるでしょう。
そして、それが「憲法で認められている」ので違憲扱いになりません。
つまり、私たち国民の基本的人権は、内閣に委ねられることになってしまいます。
現憲法では「私たち一人一人のもの」である権利が、「内閣のもの」となります。
これもまた危険な改憲でもあります。
ここは、現憲法では「罰則を設けることができない」に留める程度でした。改憲草案では「義務を課し、又は権利を制限する規定」に変わっています。
なんとなく読むと「設けることができない」とあるので、安心しそうになります。
ですが。「政令には、その法律の委任がある場合を除いては」という文章も併記されています。これが実は曲者なんですよね。
これは言い換えれば、
「該当する法律さえあれば、国民に義務を課し、権利を制限することができる」
ことになるわけです。
そして他の改正案とも当然繋がっていますから、そのことから考えると間違いなく法律をすぐに整備し、国民の基本的人権を制限してこようとしてくるでしょう。そして、それが「憲法で認められている」ので違憲扱いになりません。
つまり、私たち国民の基本的人権は、内閣に委ねられることになってしまいます。現憲法では「私たち一人一人のもの」である権利が、「内閣のもの」となります。
これもまた危険な改憲でもあります。
現憲法をもう一度読む
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。
但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
後記
内閣の職務についても、憲法にて細かく定められています。
そして、決して「立法機関」ではないのです。
法律に従って行政を担当するのが、内閣です。
それが、改憲草案の方ではしれっと危険な文章に置き換えられていることにも気づいてただければ幸いです。
内閣の職務についても、憲法にて細かく定められています。そして、決して「立法機関」ではないのです。法律に従って行政を担当するのが、内閣です。
それが、改憲草案の方ではしれっと危険な文章に置き換えられていることにも気づいてただければ幸いです。
繋がりのある条文
この第73条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
この第73条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
最後まで読んでくださってありがとうございました!