【日本国憲法第8条の解説】皇族は基本的に財産を自由にできない

日本国憲法第8条

こちらは日本国憲法第8条の解説記事です。

この第8条が伝えたいポイントというのは……

明治憲法(大日本帝国憲法)時代、皇室の大財閥化を許し、
天皇中心の国にしたことに対する反省からできた条文です。
現在、皇室の財産はすべて「国のもの」という扱いとされています。

明治憲法(大日本帝国憲法)時代、皇室の大財閥化を許し、天皇中心の国にしたことに対する反省からできた条文です。現在、皇室の財産はすべて「国のもの」という扱いとされています。

具体的にはどういうことなのか?

そして、自民党が推し進めようとしている改憲草案の中身は?
その問題点とは?そういった解説・考察をしています。

ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです!

目次

日本国憲法第8条【財産授受の制限】

意訳

天皇や皇族が、財産を譲り渡したり譲り受けたり、
または誰かに与えたりするときは、国会の許可を必要とする。

天皇や皇族が、財産を譲り渡したり譲り受けたり、または誰かに与えたりするときは、国会の許可を必要とする。

原文

皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

※賜与(しよ)……身分の高い者が目下の者に金品等を与えること

日本国憲法第8条を更に深堀してみよう

要点①:なぜ国会の議決を必要?

なぜ皇族が自らの意思で財産の使い方を決めることができないのでしょうか?
受け取ることさえも自分達の判断で決めることができません。

それは、戦前の反省から来ています。

戦前の皇室は膨大な財産をもっていて、権力もありました。
正確に言えば、天皇には絶対的な力があるという権威を確立させるために、
皇室の財産を充実させていく制度が設けられていました。
例えば国所有の土地等を皇室財産としたり、戦争で得た賠償金を皇室の懐に入れたり。

このようにして皇室が圧倒的な財力を持たせ権威を高めていったのが、明治憲法時代です。
その結果は推して知るべく、です。

こういった反省も踏まえ、皇室に財産(及び権力)が集中することのないよう、
第88条にて皇室の財産は国のものとすると規定しました。
そして、この第8条にて、皇室が財産を好き勝手にできないよう、
「国会の議決を要する」といったこの規定が設けられました。

この第8条が規定されたことによって、
特定の人物や企業団体が、財産を介して皇室と結びつき権威を得るという企みも防げるようになりました。

なぜ皇族が自らの意思で財産の使い方を決めることができないのでしょうか?受け取ることさえも自分達の判断で決めることができません。

それは、戦前の反省から来ています。

戦前の皇室は膨大な財産をもっていて、権力もありました。正確に言えば、天皇には絶対的な力があるという権威を確立させるために、皇室の財産を充実させていく制度が設けられていました。例えば国所有の土地等を皇室財産としたり、戦争で得た賠償金を皇室の懐に入れたり。

このようにして皇室が圧倒的な財力を持たせ権威を高めていったのが、明治憲法時代です。その結果は推して知るべく、です。

こういった反省も踏まえ、皇室に財産(及び権力)が集中することのないよう、第88条にて皇室の財産は国のものとすると規定しました。そして、この第8条にて、皇室が財産を好き勝手にできないよう、「国会の議決を要する」といったこの規定が設けられました。

この第8条が規定されたことによって、特定の人物や企業団体が、財産を介して皇室と結びつき権威を得るという企みも防げるようになりました。

要点②:第88条にて、皇室の財産は国の財産だと規定されている

要点①でも触れましたが、第88条にて「皇室の財産はすべて国に属する」と定められています。
では、この第8条までわざわざ設けられたのはなぜでしょうか?

それは、第88条はあくまでも国会に対して規定されたものだからです。
この第8条は皇室側に向けて「勝手に譲ることはできない」と明記したものです。

このような違いがありますので、似ているようですが両方必要だということです。

要点①でも触れましたが、第88条にて「皇室の財産はすべて国に属する」と定められています。では、この第8条までわざわざ設けられたのはなぜでしょうか?

それは、第88条はあくまでも国会に対して規定されたものだからです。この第8条は皇室側に向けて「勝手に譲ることはできない」と明記したものです。

このような違いがありますので、似ているようですが両方必要だということです。

要点③:詳細は法律にて具体的に定められている

皇室となると「すべて」国会の議決が必要となるのでしょうか?
日々のちょっとした買い物……例えばですが、コンビニで飲み物を買いたいというような時等。

いえ、さすがにそんなことはありません。

皇室のお金に細かいことは「皇室経済法」という法律にて定められています。

この法律によると、少額のものであり、皇室に経済力が集中する可能性がないと思われるものに関しては、
国会の議決がなくても自由にできます。
例として挙げた「コンビニで飲み物を購入する」は、
「相当の対価による売買等通常の私的経済行為に係る場合」にあたるので、問題ありません。

他にもいくつか、皇室が自由にできる内容が定められています。
「外国交際のための儀礼上の贈答に係る場合」等のようなものであり、
皇室の財産を潤わせることにはつながらないと判断されている内容です。

このように例外はありますが、基本はあくまでも「国会の議決」が必要です。

皇室となると「すべて」国会の議決が必要となるのでしょうか?日々のちょっとした買い物……例えばですが、コンビニで飲み物を買いたいというような時等。

いえ、さすがにそんなことはありません。

皇室のお金に細かいことは「皇室経済法」という法律にて定められています。

この法律によると、少額のものであり、皇室に経済力が集中する可能性がないと思われるものに関しては、国会の議決がなくても自由にできます。例として挙げた「コンビニで飲み物を購入する」は、「相当の対価による売買等通常の私的経済行為に係る場合」にあたるので、問題ありません。

他にもいくつか、皇室が自由にできる内容が定められています。「外国交際のための儀礼上の贈答に係る場合」等のようなものであり、皇室の財産を潤わせることにはつながらないと判断されている内容です。

このように例外はありますが、基本はあくまでも「国会の議決」が必要です。

この第8条の改憲草案はどんな内容?

自民党はこの第8条をどのように改憲しようとしているのでしょうか。
そして、その問題点とは?
簡単にいうと、以下の通りです。

何をどう変えようとしている?

「法律で定める場合を除き」という文言を追加。
また「国会の議決」から「国会の承認」へ変更。

問題点は?

国会を通さずに、皇室が自由にできる範囲を広げようとしています。
また「議決」ではなく「承認」としてハードルを下げてきました。
このことにより、明治憲法時代に逆戻りしかねない、つまり皇室が再び大財閥化するおそれがあります。

国会を通さずに、皇室が自由にできる範囲を広げようとしています。また「議決」ではなく「承認」としてハードルを下げてきました。このことにより、明治憲法時代に逆戻りしかねない、つまり皇室が再び大財閥化するおそれがあります。

改憲草案の原文を紹介します。そして具体的に考察もしてみました

改憲草案原文:第8条

※赤文字が変更箇所です。

皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、
法律で定める場合を除き国会の承認を経なければならない。

皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き国会の承認を経なければならない。

(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)

改憲草案の問題点①:皇室が自由にできる範囲が広がるおそれ

「法律で定める場合を除き」という文言がわざわざ挿入されました。

確かに今でも要点③で述べたように「皇室経済法」という法律で、例外となる範囲が定められています。
ですが、あくまでも例外です。

この例外を憲法上にまでわざわざ明記させることの意味から考えてみます。
現憲法では「あくまでも憲法最優先」という意識が先立つと思います。

ですが「法律で定める場合を除き」とわざわざ明記してしまうことにより、
法律で定められていることが確実に優先されるようになってしまいます。

そうして、法律を改正していくことで。
国会の関与を必要とせず皇室が自由にできる範囲を広げることがたやすくなってしまいます。
なにしろ憲法にて「法律で定める場合を除き」と、法律を重んじるよう明記されてしまうのですから。

というのも、法律改正は憲法改正よりは簡単だからです(第59条
ですので、悪意のある政党がもし多数議席を確保した場合、
皇室そのものを再び大財閥化することはもちろんのこと、
皇室と特定団体とのつながりを強くすることも可能となってしまいます。

「法律で定める場合を除き」という文言がわざわざ挿入されました。

確かに今でも要点③で述べたように「皇室経済法」という法律で、例外となる範囲が定められています。ですが、あくまでも例外です。

この例外を憲法上にまでわざわざ明記させることの意味から考えてみます。現憲法では「あくまでも憲法最優先」という意識が先立つと思います。

ですが「法律で定める場合を除き」とわざわざ明記してしまうことにより、法律で定められていることが確実に優先されるようになってしまいます。

そうして、法律を改正していくことで。国会の関与を必要とせず皇室が自由にできる範囲を広げることがたやすくなってしまいます。なにしろ憲法にて「法律で定める場合を除き」と、法律を重んじるよう明記されてしまうのですから。

というのも、法律改正は憲法改正よりは簡単だからです(第59条
ですので、悪意のある政党がもし多数議席を確保した場合、皇室そのものを再び大財閥化することはもちろんのこと、皇室と特定団体とのつながりを強くすることも可能となってしまいます。

改憲草案の問題点②:「国会の承認を経る」はハードルを下げている

文末に注目してみましょう。
現憲法の「国会の議決に基づく」が「国会の承認を経る」に変わっています。

「国会の議決に基づく」というのは強い言葉です。
皇室の財産の使い方を決めるのはあくまでも国会である、としています。

ところが「国会の承認を経る」となると、
あくまでも国会は承認するかどうかの判断だけであり、主導権は皇室にあるとも解釈できるようになります

このように、少し言葉を変えるだけで主導権が変わってしまいます。
また、言葉遊びができる余地が生まれてしまいます。

文末に注目してみましょう。現憲法の「国会の議決に基づく」が「国会の承認を経る」に変わっています。

「国会の議決に基づく」というのは強い言葉です。皇室の財産の使い方を決めるのはあくまでも国会である、としています。

ところが「国会の承認を経る」となると、あくまでも国会は承認するかどうかの判断だけであり、主導権は皇室にあるとも解釈できるようになります

このように、少し言葉を変えるだけで主導権が変わってしまいます。また、言葉遊びができる余地が生まれてしまいます。

現憲法をもう一度読む

皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

後記

皇室の財産に関しても、現憲法では戦前の反省を生かしたものとなっています。
日本人の「天皇・皇室」に対する想いは一種の宗教染みたものが、やはりあります。
そんな中、皇室が再び多大な財産を築ける状況になったらどうなるか。
財産はやはり権威となりますからね……。

皇室の財産に関しても、現憲法では戦前の反省を生かしたものとなっています。日本人の「天皇・皇室」に対する想いは一種の宗教染みたものが、やはりあります。

そんな中、皇室が再び多大な財産を築ける状況になったらどうなるか。財産はやはり権威となりますからね……。

この第8条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

この第8条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

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