
もしもだけど、何も悪いことをしてないのに、ある日突然警察に呼ばれて「正直に言え!お前がやったんだろ!」って無理やり言わせられたらどうなるだろう?
怖くて、つい「はい…」って言っちゃいそうになるかもしれない。
でもやっていないんだ。
…そんなふうに、無理やり「犯人扱い」されることを防ぐために、この第38条があるんだよ。
これについて、天使くんと悪魔くんが話してくれているから、是非最後まで読んでいってね!
第38条【自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界】
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2
強制、拷問若しくは強迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3
何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。



悪魔くん、今日は日本国憲法第38条について話そう!
まずはさ、意訳してみてよ



まず、誰であろうと、自分にとってヤバいことを無理やり言わせちゃいけねぇよ。
それから、ムリヤリ口を割らせて言わせた告白とか、拷問とか、そういったひでぇ扱いをして得られた告白は、証拠に使っちゃダメだ。
最後に、証拠が自白だけしかねぇなら、有罪にもできねぇし、罰も与えられねぇってわけだ!



うんうん、いいね!



チッ、なんか犯罪者にやさしすぎじゃねぇか?
なんかやったもん勝ちになりそうだな。



気持ちはわからなくもないけど、でもね、僕たちが守りたいのは「正しい裁判」なんだ。
というのもね、昔は無理やり自白させて、罪もない人を捕まえたり、罰したりするってのがたくさんあったんだよ。
それを防ぐために、第38条があるんだ。



でもよ、やっと逮捕したんだからさ、警察がミスするわけないだろ?
だけど悪い奴ほど往生際悪いじゃん?
さっさと吐かせてぶち込んじゃえばいいだろ。



警察だってミスはするよ?
なのに、そんなことをしていたら、本当に悪い人を見逃しちゃうじゃん?
無理に吐かせた言葉がウソだったら、どうなる?
本当の犯人はその間に逃げちゃうかもしれない。
そもそも、無実の人を犠牲にしてしまうのは、絶対にダメだよ。
それとも「逮捕できました!」という実績さえ作れれば、本当のことや、冤罪をかけられた人の人生なんてどうでもいいというの?



うぐっ……
まあ、言われてみりゃ、
ムリヤリ白状させたって信用できねぇよな……。
でもよ、拷問なんか今どきしねぇだろ?



今はあからさまな拷問は少ないかもしれないけど、
プレッシャーをかけたり、長時間拘束して疲れさせたりする取り調べも問題になることがあるよ。
だからこそ「自白だけを証拠にする」ってのはダメだって、憲法でしっかり決めてるんだ。



なるほどなぁ……。
つまり、ちゃんとした証拠が他にも必要だってことか。



その通り!
証拠を集めるって大変なことだけど、
それこそが本当に「正しい裁判」に必要なんだ。
憲法は、犯罪をなくすためだけじゃなく、無実の人を守るためにもあるんだよ。



ふーん……。
まぁ、確かに、国に都合のいいように人をブチ込める世界になったら、俺だって怖ぇもんな……。



そうだね。
だからこそ、憲法は国から個人を守るためにあるんだよ。



なぁ、それはわかったけどさ、
さっきから「自白」がどうとか言ってるじゃん?
条文には確か「供述」ってのも出てきたよな?
正直、何が違うんだ?
どっちもペラペラ喋ることじゃねぇのか?



いい質問だね、悪魔くん!
簡単に言うと、「供述」は広い意味で、
「自白」はその中の特別なものだよ。



は?
広いとか狭いとか、わかりにくいな。
もっとわかりやすく言えよ。



たとえばこんな感じ!
供述っていうのは、
取り調べで聞かれたことに答える全部のことを言うんだ。
たとえば、
「あの時間、どこにいましたか?」
「友達と映画館にいたよ」
っていうのも供述。
別に自分が悪いことしたとは言ってないよね?



一方で、自白っていうのは、
「俺が盗みました」とか、
「あの人を殴ったのは俺です」
みたいに、
自分が犯罪をやったことを認める話だけのことを言うんだ。



ああ、なるほど。
つまり、供述はただの「喋ったこと全部」、
自白は「犯罪を認めた特別な供述」ってことか



その通り!
そしてね、特に自白はとっても重いものだから、
無理やり言わせたものだったり、
信用できない自白は、絶対に証拠にしちゃいけないんだ。
だから憲法第38条は、すごく慎重に扱えって言ってるんだよ。



自白だけじゃなく、
その自白が正しいというのを裏付けるような、
まわりの証拠もちゃんと集めないといけないってことだよな。
例えば防犯カメラの映像とか、指紋とか。



そういうこと!



もう1つ気になることがあるんだけどよ。



「喋らなくてもいい」ってのはなんだ?
それってなんだよ、なんで黙ってても許されんだよ?
逃げ得じゃねぇのか?



「黙秘権(もくひけん)」っていう大事な権利のことだね!
自分に不利なことを無理にしゃべらされない権利だよ。



憲法でこれも決まってるとはな。



うん、大事なことだよ!
だってね、たとえばさ、
捜査官に「全部話せ!」って、
こわーい顔で、机をバンバン叩かながら脅されたりしたら、どう?
本当は無実なのにビビって
「僕がやりました」って言っちゃうかもしれないでしょ?
そんなの間違っているよね。



確かに、ビビったら何でも言っちまいそうだな……。
でもよ、自分の名前とかも言わなくていいのか?



いい質問だね。
名前だけは別なんだ。
名前は、取り調べとか裁判を進めるために絶対必要だから、
黙秘権の対象にはならないって決まっているんだ。



なるほどな。
名前は言わなきゃいけないけど、それ以外は黙っててもOKってわけか。



その通り!
たとえ本当に犯人だったとしても、
自分でしゃべりたくないなら黙っていていいんだよ。
無理やり言わせるのは危険なことなんだって、
昔の失敗から学んだからね。



ふーん。
昔は、力ずくで白状させてたってわけか。
そりゃ、間違ったやつもたくさん捕まえるわなぁ。



うん。
だから今の憲法では「しゃべりたくない」っていう人の気持ちをちゃんと守ることになってるんだ。
それが黙秘権だよ。



だんだんわかってきた気がするぞ。
憲法って、犯罪者に甘いんじゃなくて、
「間違った裁判を防ぐため」にあるんだな。



うん、よくわかってきたね!
そうやって一つ一つ、「みんなの権利」を大事にするのが、
憲法のすごいところなんだよ。



なぁ、憲法すごいって言っているけどよ、
なんか改憲しようって話も出ているんだろ?
そうなったらこの第38条はどんな感じになるんだ?



そうなんだよ…
証拠が自白しかない場合にね、
一応「自白だけじゃ有罪にできないよ」というのはそのままなんだけど、
「刑罰を科せられない」っていう部分が削除されてるんだ。



文章が変わったら、その度に解釈もやり直さなければいけないんだ。
で、これは多分ね、ちょっと解釈をねじ曲げて、
「有罪扱いにはしないけど、何かしらの罰を与える」
みたいなこともできちゃうかもしれない、ってことだね。



それ、やばくね?



そうだね。もう1つ。
この第38条のタイトルも変わっているんだ。
今の憲法にはタイトルにはっきりと
「自白強要の禁止」
「自白の証拠能力の限界」
って書かれているんだけど…



けど…?
も、もしかして削除されてるのか?!



そうなんだよ。
「刑事事件における自白等」
に変わってしまっているんだ。



なんだよそれ。
「等」にしちゃったら、
「禁止」じゃないって解釈もできちゃうじゃないか。



やばいな、それ…
また昔みたいなやり方がOKとされてしまうのか?



その危険性も高いよね。
憲法って、言葉一つ変わっただけでも、国民の権利がガラッと変わっちゃう。



憲法は、権力を持った側にブレーキをかけるためのものでもあるのに、そのブレーキを無くしてしまおうってことなのか?(第99条)



うん。
だから、僕たちは今の憲法を大切にしていかなきゃね!
そのためにも1つずつ、簡単にでいいから理解していこう!
まとめ
この第38条は「無実の人々を守るための大事なルール」でもあることが、
少しでも伝わったでしょうか?。



僕たちは普段の生活の中で警察に捕まるとか、
取り調べを受けるとかなんて、あまり想像しないよね。
でも、もし万が一、何かの間違いで疑われてしまうことがあるかもしれない。
でも、そんな時はこの第38条も僕たちを守ってくれるんだよ。

