こちらは日本国憲法前文の解説記事です。
この前文が伝えたいポイントというのは……
前文では、第1条から始まる条文全ての前提として、
以下のような「理想」を掲げ、
そしてその理想を実現すべく全力で努力することを約束するのだと、
そういったことが書かれています。
【前文内容まとめ】
・この日本国憲法の目的や基本的な事
・平和への決意、戦争放棄
・平和を守るために国際協力する
・改正を簡単にできないようにしている
具体的にはどういうことなのか?
そして、自民党が推し進めようとしている改憲草案の中身は?
その問題点とは?そういった解説・考察をしています。
ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです!
日本国憲法 前文
意訳
原文
※改行について……原文同様のタイミングで改行すると読みにくいため、一文ごとに改行し、さらに段落ごとに行間をあけました。
日本国憲法 前文 を更に深堀してみよう
前文では、この日本国憲法を制定した理由や目的、そして3つの原則が書かれています。
そして、第1条~第103条はすべて、この前文で宣言されている内容に則って制定されています。
前文は4つの段落に分けられていますので、1段落ずつ解説していきます。
前文では、この日本国憲法を制定した理由や目的、そして3つの原則が書かれています。そして、第1条~第103条はすべて、この前文で宣言されている内容に則って制定されています。
前文は4つの段落に分けられていますので、1段落ずつ解説していきます。
要点①:日本国憲法の制定目的、そして国民主権について
第1段落では、基本的な原理について書かれています。
- 主権は国民にある
- 再び戦争が起こることのないようにする
- 国政(政治)は国民に由来するものであり、国民は幸せや利益を享受する権利がある
そういったことを目的として、この日本国憲法を制定したのです。
それは私たちだけではなく、子孫のためでもあるのです。
また、政府によって戦争が起きたのだということも明記されています。
だから、この考えに反する憲法や法律、詔勅(天皇の文書)は一切無効とするということも宣言しています。
- 主権は国民にある
- 再び戦争が起こることのないようにする
- 国政(政治)は国民に由来するものであり、国民は幸せや利益を享受する権利がある
そういったことを目的として、この日本国憲法を制定したのです。それは私たちだけではなく、子孫のためでもあるのです。
また、政府によって戦争が起きたのだということも明記されています。
だから、この考えに反する憲法や法律、詔勅(天皇の文書)は一切無効とするということも宣言しています。
【前文】第一段落
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
要点②:平和主義・戦争放棄、基本的人権の尊重について
第2段落では、平和主義・戦争放棄、そして基本的人権の尊重について書かれています。
- 恒久の平和を願い、維持する
- 私たちは人間らしく生きる権利がある(心身の自由、差別されない権利)
- 私たちは平和に生きる権利がある
【前文】第二段落
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する国民の構成と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れかれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
要点③:他国との関係について
第3段落では、他国との関係について書かれています。
自分の国の主権を維持すること
他国とも対等な関係でいること
そのためのルールは守り、協調していく責任があるのです。
【前文】第三段落
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
要点④:誓い
前文で書かれていることは全力で達成することを誓う、という言葉で、前文が締めくくられています。
私たちは、そのために努力し続けなければなりません。
【前文】第四段落
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
この前文の改憲草案はどんな内容?
自民党はこの前文をどのように改憲しようとしているのでしょうか。
そして、その問題点とは?
簡単にいうと、以下の通りです。
改憲草案の原文を紹介します。そして具体的に考察もしてみました
改憲草案原文:前文
※赤文字が変更箇所です。
自民党による言い分
現行憲法の前文は、全体が翻訳調でつづられており、日本語として違和感があります。
そして、その内容にも問題があります。
前文は、我が国の歴史・伝統・文化を踏まえた文章であるべきですが、
現行憲法の前文には、そうした点が現れていません。
また、前文は、いわば憲法の「顔」として、その基本原理を簡潔に述べるべきものです。
現行憲法の前文には、憲法の三大原則のうち「主権在民」と「平和主義」はありますが、
「基本的人権の尊重」はありません。
特に問題なのは、
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」
という部分です。
これは、ユートピア的発想による自衛権の放棄にほかなりません。
こうしたことを踏まえ、今回、現行憲法の前文を全面的に書き換えることとしました。
(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)
現行憲法の前文は、全体が翻訳調でつづられており、日本語として違和感があります。そして、その内容にも問題があります。前文は、我が国の歴史・伝統・文化を踏まえた文章であるべきですが、現行憲法の前文には、そうした点が現れていません。
また、前文は、いわば憲法の「顔」として、その基本原理を簡潔に述べるべきものです。現行憲法の前文には、憲法の三大原則のうち「主権在民」と「平和主義」はありますが、「基本的人権の尊重」はありません。
特に問題なのは、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という部分です。これは、ユートピア的発想による自衛権の放棄にほかなりません。
こうしたことを踏まえ、今回、現行憲法の前文を全面的に書き換えることとしました。
(日本国憲法改正草案Q&A増補版より引用)
改憲草案の問題点①:そもそも現憲法の「前文」を理解していない
前文は、我が国の歴史・伝統・文化を踏まえた文章であるべきですが、
現行憲法の前文には、そうした点が現れていません。
前文を全面的に変えた理由のひとつとして、このことを挙げていますが、
これは現憲法の「前文」の主旨を全く理解していないと言わざるを得ないでしょう。
今の前文は、とにかくも
- 国民主権
- 平和主義・戦争放棄
- 基本的人権の尊重
そして国際とも協調していける日本を目指すことを約束しているものです。
さらに第1条以降の条文は、この約束に沿ったものであるべきだとしているものです。
歴史・伝統・文化云々の問題ではないのです。
それを大切にするためにも、その土台となるためのものを前提をしているのです。
よく考えてみてください。
戦争中に、伝統を大切にしろ!ということができるでしょうか?
戦争中に、文化を~なんて叫べるでしょうか?継承できるでしょうか?
基本的人権が尊重されない社会で、伝統や文化を本当の意味で大切にできるでしょうか?
そして。
自民党が理想とする「歴史、伝統、文化」とは一体なんでしょうか。
それは間違いなく、明治憲法時代のことです。
国民は国の駒であり、国民に主権も権利もなかった時代を「伝統」として引き継ぎ、
我慢は美徳とか、国に従順な国民性を「文化」と従っています。
それは、第1条以降の改憲草案で露になっています。
そのうえで、前文の改憲草案を読むと、空虚に読めてきます。
(現憲法の焼き直し文章、つなぎ合わせ、日本語としての軽さ)
前文は、我が国の歴史・伝統・文化を踏まえた文章であるべきですが、現行憲法の前文には、そうした点が現れていません。
前文を全面的に変えた理由のひとつとして、このことを挙げていますが、これは現憲法の「前文」の主旨を全く理解していないと言わざるを得ないでしょう。
今の前文は、とにかくも
- 国民主権
- 平和主義・戦争放棄
- 基本的人権の尊重
そして国際とも協調していける日本を目指すことを約束しているものです。さらに第1条以降の条文は、この約束に沿ったものであるべきだとしているものです。
歴史・伝統・文化云々の問題ではないのです。それを大切にするためにも、その土台となるためのものを前提をしているのです。
よく考えてみてください。
戦争中に、伝統を大切にしろ!ということができるでしょうか?戦争中に、文化を~なんて叫べるでしょうか?継承できるでしょうか?基本的人権が尊重されない社会で、伝統や文化を本当の意味で大切にできるでしょうか?
そして。自民党が理想とする「歴史、伝統、文化」とは一体なんでしょうか。それは間違いなく、明治憲法時代のことです。国民は国の駒であり、国民に主権も権利もなかった時代を「伝統」として引き継ぎ、我慢は美徳とか、国に従順な国民性を「文化」と従っています。それは、第1条以降の改憲草案で露になっています。
そのうえで、前文の改憲草案を読むと、空虚に読めてきます。(現憲法の焼き直し文章、つなぎ合わせ、日本語としての軽さ)
改正草案の問題点②:他国を見下した厚顔無恥な国家
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、
今や国際社会において重要な地位を占めており、
平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
「我が国は(中略)今や国際社会において重要な地位を占めており」
この文章を憲法に入れてくる厚かましさ。
また、「先の大戦による荒廃」というのは、第二次世界大戦のことです。
そう、「この戦争のことだけ」にしか触れていません。
現憲法では「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやう」と明記しています。
つまり、過去の戦争は全て戦争は政府のせいで起こったものである、としています。
それを、改憲草案では「第二次世界大戦」のことにしか触れていません。
しかも「荒廃」した、最後の部分のみ。
加えても、政府の行為という言葉も削除しました。
それはつまり、全く反省していないと言ったにも等しいです。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
「我が国は(中略)今や国際社会において重要な地位を占めており」
この文章を憲法に入れてくる厚かましさ。
また、「先の大戦による荒廃」というのは、第二次世界大戦のことです。そう、「この戦争のことだけ」にしか触れていません。
現憲法では「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやう」と明記しています。つまり、過去の戦争は全て戦争は政府のせいで起こったものである、としています。
それを、改憲草案では「第二次世界大戦」のことにしか触れていません。しかも「荒廃」した、最後の部分のみ。加えても、政府の行為という言葉も削除しました。それはつまり、全く反省していないと言ったにも等しいです。
改正草案の問題点③:基本的人権を尊重するのが国から国民になっている
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、
基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
まず、現憲法では「主権は国民である」と明確に宣言しているのですが、その文章が削除されています。
さらに「基本的人権を尊重するのは国民である」となっています。
現憲法では「国は国民たちの基本的人権を尊重して政治を行いなさい」とされているのですが、
ここでは国民が自ら尊重しなさいとしています。
それはどういう意味なのでしょうか。
第11条、そして第97条にての改憲草案では、
明確に基本的人権を尊重することを放棄してきています。
今は「基本的人権は、誰もが生まれながらにしてもっているものである」としているのですが、
改憲草案では「国が与えてやっているもの」であり、何かの時は制限できるとしているのです。
また、国が国民を助けるのではなく、国民同士で助け合って、さらに国を助けなさいという内容になっています。
そうです、自助を明確にしています。
国が国民を助ける気はないのだということが、前文からも漏れてきていますね。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
まず、現憲法では「主権は国民である」と明確に宣言しているのですが、その文章が削除されています。
さらに「基本的人権を尊重するのは国民である」となっています。現憲法では「国は国民たちの基本的人権を尊重して政治を行いなさい」とされているのですが、ここでは国民が自ら尊重しなさいとしています。
それはどういう意味なのでしょうか。
第11条、そして第97条にての改憲草案では、明確に基本的人権を尊重することを放棄してきています。
今は「基本的人権は、誰もが生まれながらにしてもっているものである」としているのですが、改憲草案では「国が与えてやっているもの」であり、何かの時は制限できるとしているのです。
また、国が国民を助けるのではなく、国民同士で助け合って、さらに国を助けなさいという内容になっています。
そうです、自助を明確にしています。国が国民を助ける気はないのだということが、前文からも漏れてきていますね。
改正草案の問題点④:日本語として汚い文章になっている
現憲法では、「日本国民」「われら」と主語が統一されています。
主権は国民にあるのだと宣言し、国は国民の基本的人権を尊重するとしています。
そして、だからこそ、主権を持っている私たち国民が、私たちの幸せや平和のために努力すると誓うのだと。
ところが、改憲草案では主語が統一されていません。
日本国、我が国、日本国民、我々……。
そして、主語と繋がる述語は果たしてそれでいいの?という文章になっています。
とどのつまり、日本語として形が汚いんですよね。
下記、あえて主語を強調した文章を載せます。
興味があれば、プルダウンを開いて読んでみてください。
現憲法では、「日本国民」「われら」と主語が統一されています。主権は国民にあるのだと宣言し、国は国民の基本的人権を尊重するとしています。そして、だからこそ、主権を持っている私たち国民が、私たちの幸せや平和のために努力すると誓うのだと。
ところが、改憲草案では主語が統一されていません。
日本国、我が国、日本国民、我々……。そして、主語と繋がる述語は果たしてそれでいいの?という文章になっています。
とどのつまり、日本語として形が汚いんですよね。
下記、あえて主語を強調した文章を載せます。興味があれば、プルダウンを開いて読んでみてください。
改憲草案の前文
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境をを守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。
現憲法をもう一度読む
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する国民の構成と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れかれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
後記
前文は第1条から始まる本文の、大切な前提となっているものです。
前文にそぐわない内容は決して憲法はもちろんのこと、法律や条令、
そして詔勅にも、何にも認められません。
この前文は日本国憲法の大きな土台でもあり、道標であるとも言えるでしょう。
この前文を疎かにしないようにしたいものです。
前文は第1条から始まる本文の、大切な前提となっているものです。前文にそぐわない内容は決して憲法はもちろんのこと、法律や条令、そして詔勅にも、何にも認められません。
この前文は日本国憲法の大きな土台でもあり、道標であるとも言えるでしょう。
この前文を疎かにしないようにしたいものです。
繋がりのある条文
この前文とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
この前文とも繋がりの深い条文は以下の通りです。(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
最後まで読んでくださってありがとうございました!