【日本国憲法第27条の解説】勤労の権利、そして国は環境を整えましょう

日本国憲法第27条

こちらは日本国憲法第27条の解説記事です。

この第27条が伝えたいポイントというのは……

勤労の権利について規定されており、そして劣悪な条件や強制労働から国民を守るための条文です。

この条文に書かれている「義務」は「働くべきだ!」というような、
働くことを強制する意味ではありません。
仕事をする能力のある人は仕事に励んで生活してくださいね、
という「原則的な方針」を示したものにすぎません。
※強制労働は第18条にて禁止されていることからも、
「強制的な意味ではない」ことがわかります。

大切なのは
「働きたい人が、真っ当に、適切な環境で働けるように、社会を整えていく」
「立場の弱い労働者側が、自分の生命や生活を犠牲にすることなく安心して働ける社会にする」
ことが、国に課せられているということです。

勤労の権利について規定されており、そして劣悪な条件や強制労働から国民を守るための条文です。

この条文に書かれている「義務」は「働くべきだ!」というような、働くことを強制する意味ではありません。仕事をする能力のある人は仕事に励んで生活してくださいね、という「原則的な方針」を示したものにすぎません。
※強制労働は第18条にて禁止されていることからも、「強制的な意味ではない」ことがわかります。

大切なのは「働きたい人が、真っ当に、適切な環境で働けるように、社会を整えていく」「立場の弱い労働者側が、自分の生命や生活を犠牲にすることなく安心して働ける社会にする」ことが、国に課せられているということです。

具体的にはどういうことなのか?

そして、自民党が推し進めようとしている改憲草案の中身は?
その問題点とは?そういった解説・考察をしています。

ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです!

目次

日本国憲法第27条【勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止】

意訳

全ての国民には働く権利があります。
働かせるときの様々な条件、
例えば賃金や就業時間、休憩等についてはの決まり事は法律で決めていきます。
なお、子どもをこき使うことは許されません。

全ての国民には働く権利があります。働かせるときの様々な条件、例えば賃金や就業時間、休憩等についてはの決まり事は法律で決めていきます。なお、子どもをこき使うことは許されません。

原文

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

2
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

3
児童は、これを酷使してはならない。

日本国憲法第27条を更に深堀してみよう

要点①:勤労の権利、そして義務とは

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

働きたいと思っている人・働く能力のある人がまさに「働く」ことを保障しています。
誰もが「勤労の権利(働く権利)」を持っており、それを守ろうということです。

というのも、日本国憲法というのは、国民を守るために「国家権力側」に向けられたものです。

国側は国民の「勤労の権利」を保障するために、以下の二つの義務があるとされています。

  1. 国民が労働の機会を得られるように、労働市場の体制を整える義務
     例)職業安定法(人材紹介、職業斡旋等)、障がい者や高齢者の雇用を推進するための法律等
  2. 労働の機会を得られない国民に対して、生活を保障する義務
     例)雇用保険法、休職支援法等

「義務」は、「働くべきだ」という意味ではない

権利と供に書かれている「義務」という言葉。
これをもって、「働くべきだ」と、働いていない人(働けない人等含む)を批判する人もいます。

ですが、この「義務」という言葉は国民に勤労を強制するという意味ではありません。
※そもそも、意志に反する強制労働は認められていません(第18条:苦役の禁止

これはあくまでも、
「働ける人は働いて、生活を維持してね」という「原則的な指針」を義務という言葉で出しただけに過ぎず、
国民に勤労の義務を課したものではありません。

先ほども書きましたが、日本国憲法は「国家権力側」に向かって言っているものです。
国民を守るために、国民の様々な権利を保障するために、国としてこうしなさい、と。

このことから考えても、
ここで突然国民側に向かって「働くべきだ!」となるのはおかしいと思いますよね。

あくまでも、劣悪な条件や強制労働から国民を守るためであり、
そして国民が自分たちの生命や健康を確保できる労働環境を約束するための条文です。

「立場の弱い労働者側が、自分の生命や生活を犠牲にすることなく、安心して働ける社会にする
ということが、国に課せられているのです。

働きたいと思っている人・働く能力のある人がまさに「働く」ことを保障しています。誰もが「勤労の権利(働く権利)」を持っており、それを守ろうということです。

というのも、日本国憲法というのは、国民を守るために「国家権力側」に向けられたものです。国側は国民の「勤労の権利」を保障するために、以下の二つの義務があるとされています。

  1. 国民が労働の機会を得られるように、労働市場の体制を整える義務
     例)職業安定法(人材紹介、職業斡旋等)、障がい者や高齢者の雇用を推進するための法律等
  2. 労働の機会を得られない国民に対して、生活を保障する義務
     例)雇用保険法、休職支援法等

「義務」は、「働くべきだ」という意味ではない

権利と供に書かれている「義務」という言葉。これをもって、「働くべきだ」と、働いていない人(働けない人等含む)を批判する人もいます。

ですが、この「義務」という言葉は国民に勤労を強制するという意味ではありません。
※そもそも、意志に反する強制労働は認められていません(第18条:苦役の禁止

これはあくまでも、「働ける人は働いて、生活を維持してね」という「原則的な指針」を義務という言葉で出しただけに過ぎず、国民に勤労の義務を課したものではありません。

先ほども書きましたが、日本国憲法は「国家権力側」に向かって言っているものです。国民を守るために、国民の様々な権利を保障するために、国としてこうしなさい、と。

このことから考えても、ここで突然国民側に向かって「働くべきだ!」となるのはおかしいと思いますよね。

あくまでも、劣悪な条件や強制労働から国民を守るためであり、そして国民が自分たちの生命や健康を確保できる労働環境を約束するための条文です。

「立場の弱い労働者側が、自分の生命や生活を犠牲にすることなく、安心して働ける社会にするということが、国に課せられているのです。

要点②:労働の条件は法律で定める

第2項
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

なぜわざわざ、これも憲法の条文にあるのでしょうか。

労働者と使用者。つまり、雇われる側と雇う側。
どうしても、労働者の方が立場が弱いものですよね。

それを利用して、使用者が劣悪な労働条件でこき使ったりすることのないように。
使用者を守るために。使用者の生活を保障し、使用者も人間らしく働けるために。

そのための「法律」を国が作るということです。
例えば、労働基準法や最低賃金法のように。

なぜわざわざ、これも憲法の条文にあるのでしょうか。

労働者と使用者。つまり、雇われる側と雇う側。どうしても、労働者の方が立場が弱いものですよね。

それを利用して、使用者が劣悪な労働条件でこき使ったりすることのないように。使用者を守るために。使用者の生活を保障し、使用者も人間らしく働けるために。

そのための「法律」を国が作るということです。例えば、労働基準法や最低賃金法のように。

要点③:児童(15歳未満)の労働は原則禁止

第3項
児童は、これを酷使してはならない。

かつての日本は(日本に限らず、ですが)、どんなに幼い子どもでも働かされたりしていました。
しかも劣悪な環境で。

そういったことの反省を踏まえ、子どもを守るために設けられた条文です。
労働基準法の第56条にて、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの子どもは
原則働かせてはならないと定められています。

一般的に、中学3年生を卒業した3月いっぱいまでの子どもを働かせてはいけないということですね。
ですから、アルバイトの募集が最低でも高校生以上となっているのはそういうことなのです。

18歳未満の場合は、職業に制限がある

15歳になって、4月1日を過ぎたから、
さぁどんな仕事をしてもいい(させてもいい)!というわけではありません。

危険有害業務とされているものへの就労は原則として認められていません。
例)有害物又は危険物を扱う業務、感電の恐れのある業務、ボイラーやクレーンを扱う業務等

また、深夜(夜10時から朝5時までの間)への就労も禁止されている等、様々な制約があります。

芸能界の「子役」はいいの……?

例えば芸能界を見ると、15歳未満の子もいますよね。
こういったことについても、勿論法律で定められています。
簡単にまとめると、以下のようになっています。

「映画の製作又は演劇の事業に限り」

  1. 健康及び福祉に有害でないこと
  2. 労働が軽易であること
  3. 修学時間外に使用すること
  4. 所轄労働基準監督署長の許可を得ること

かつての日本は(日本に限らず、ですが)、どんなに幼い子どもでも働かされたりしていました。しかも劣悪な環境で。

そういったことの反省を踏まえ、子どもを守るために設けられた条文です。労働基準法の第56条にて、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの子どもは原則働かせてはならないと定められています。

一般的に、中学3年生を卒業した3月いっぱいまでの子どもを働かせてはいけないということですね。ですから、アルバイトの募集が最低でも高校生以上となっているのはそういうことなのです。

18歳未満の場合は、職業に制限がある

15歳になって、4月1日を過ぎたから、さぁどんな仕事をしてもいい(させてもいい)!というわけではありません。危険有害業務とされているものへの就労は原則として認められていません。
例)有害物又は危険物を扱う業務、感電の恐れのある業務、ボイラーやクレーンを扱う業務等

また、深夜(夜10時から朝5時までの間)への就労も禁止されている等、様々な制約があります。

芸能界の「子役」はいいの……?

例えば芸能界を見ると、15歳未満の子もいますよね。こういったことについても、勿論法律で定められています。簡単にまとめると、以下のようになっています。

「映画の製作又は演劇の事業に限り」

  1. 健康及び福祉に有害でないこと
  2. 労働が軽易であること
  3. 修学時間外に使用すること
  4. 所轄労働基準監督署長の許可を得ること

この第27条の改憲草案はどんな内容?

児童の扱いに関しては「何人も」児童を酷使してはならない、と
現憲法よりもより厳しい言葉を入れてきました。
その他は現憲法と変わりありません。

ですが、他の改憲草案にて、場合によっては強制労働が認められることが規定されています。
また、現憲法にある「公共の福祉」という言葉が消され、
その代わりに「公益及び公の秩序」を振りかざしてきています。
※公共の福祉…誰もが安心して暮らせる社会
※公益及び公の秩序……国(主に自民党)の利益、国の望む秩序

このことからして、
勤労の権利の解釈が今までと変わる可能性があることも考慮に入れなければならないと考えています。

児童の扱いに関しては「何人も」児童を酷使してはならない、と現憲法よりもより厳しい言葉を入れてきました。その他は現憲法と変わりありません。

ですが、他の改憲草案にて、場合によっては強制労働が認められることが規定されています。また、現憲法にある「公共の福祉」という言葉が消され、その代わりに「公益及び公の秩序」を振りかざしてきています。

このことからして、勤労の権利の解釈が今までと変わる可能性があることも考慮に入れなければならないと考えています。

改憲草案の問題点①:強制労働が認められる可能性がある

現在は第18条によって強制労働が明確に禁止されています。

ですが、改憲草案においては奴隷的拘束が認められる余地が生まれています。

また「公共の福祉」という言葉。
これは言い換えれば「誰もが安心して暮らせる社会」のことです。
基本的人権について触れている第12条第13条に書かれています。

この言葉が、改憲草案では「公益及び公の秩序」に置き換えられています。
これは「安心できる社会」という意味から
「国の利益、国が求める秩序に従いなさい」に変わるということです。

このことにより、国(特に自民党)の思惑次第では、現憲法による「勤労の権利」が制限される、
つまり労働者の保護がなされなくなる可能性があるというということです。

現在は第18条によって強制労働が明確に禁止されています。ですが、改憲草案においては奴隷的拘束が認められる余地が生まれています。

また「公共の福祉」という言葉。これは言い換えれば「誰もが安心して暮らせる社会」のことです。基本的人権について触れている第12条第13条に書かれています。

この言葉が、改憲草案では「公益及び公の秩序」に置き換えられています。これは「安心できる社会」という意味から「国の利益、国が求める秩序に従いなさい」に変わるということです。

このことにより、国(特に自民党)の思惑次第では、現憲法による「勤労の権利」が制限される、つまり労働者の保護がなされなくなる可能性があるというということです。

改憲草案の問題点②:労働者が保護されなくなる

現在は第22条をもって、使用者側(雇う側)が勝手に使用者を解雇することはできません。
というのも、実はここでも「公共の福祉」という言葉が使われており、それによって労働者が守られています。

ですが、改憲草案では「公共の福祉」が削除されています。
このことにより、立場の弱い労働者を守る憲法がなくなってしまいます。

事実、例えば竹中平蔵氏はかつて以下のような発言をしています。

 首を切れない社員なんて雇えないですよ普通

小泉純一郎元首相時代以降、自民党と竹中平蔵氏はズブズブの関係です。
そして平均年収が100万円以上下がっていても意に介さず、
非正規雇用が増えている社会を止めようとしないところからも、
自民党は労働者を
「使用者側にとってもっと都合のいい存在としたい」
という思惑があることは見えてきます。

そのように、既に労働者を保護する気はなくなっていると思いますが、
改憲してしまえば、そういったことも更に堂々とできるようになります。
法律を改悪し、自由に解雇できるようにしたとしても、合憲となりかねません。

そうして、今以上に労働者は保護されなくなり、生命や生活、健康も守られなくなるでしょう。

現在は第22条をもって、使用者側(雇う側)が勝手に使用者を解雇することはできません。というのも、実はここでも「公共の福祉」という言葉が使われており、それによって労働者が守られています。

ですが、改憲草案では「公共の福祉」が削除されています。このことにより、立場の弱い労働者を守る憲法がなくなってしまいます。

事実、例えば竹中平蔵氏はかつて以下のような発言をしています。

 首を切れない社員なんて雇えないですよ普通

小泉純一郎元首相時代以降、自民党と竹中平蔵氏はズブズブの関係です。そして平均年収が100万円以上下がっていても意に介さず、非正規雇用が増えている社会を止めようとしないところからも、自民党は労働者を「使用者側にとってもっと都合のいい存在としたい」という思惑があることは見えてきます。

そのように、既に労働者を保護する気はなくなっていると思いますが、改憲してしまえば、そういったことも更に堂々とできるようになります。法律を改悪し、自由に解雇できるようにしたとしても、合憲となりかねません。

そうして、今以上に労働者は保護されなくなり、生命や生活、健康も守られなくなるでしょう。

後記

日本国憲法は「国家権力側」に向かって言っているものです。
国民を守るために、国民の様々な権利を保障するために、国としてこうしなさい、と。

このことから考えても、
ここだけが突然国民側に向かって「働くべきだ!」となるのはおかしいですよね。

もし、それでもなお「国民に勤労の義務を課しているのだ」と解釈するのであれば、
むしろ、その義務を果たせるような日本社会にする義務が国側にあるのはないでしょうか。

強制労働という意味ではなく、
働くことが楽しい・そこまで思えなくとも、働くことに希望を抱けるような社会。

搾取されるのではなく。
納めた税金も正しく国民のために使われるから、税金を払うことにも意味が見いだせる社会。

今の憲法はそういう意味でも国民を守るためにできているのですが、
政府が憲法に追いついておらず、
むしろ違反行為をしようとしている(改憲すれば違憲ではなくなる)ように見えますね……。

日本国憲法は「国家権力側」に向かって言っているものです。国民を守るために、国民の様々な権利を保障するために、国としてこうしなさい、と。

このことから考えても、ここだけが突然国民側に向かって「働くべきだ!」となるのはおかしいですよね。

もし、それでもなお「国民に勤労の義務を課しているのだ」と解釈するのであれば、むしろ、その義務を果たせるような日本社会にする義務が国側にあるのはないでしょうか。

強制労働という意味ではなく、働くことが楽しい・そこまで思えなくとも、働くことに希望を抱けるような社会。搾取されるのではなく。納めた税金も正しく国民のために使われるから、税金を払うことにも意味が見いだせる社会。

今の憲法はそういう意味でも国民を守るためにできているのですが、政府が憲法に追いついておらず、むしろ違反行為をしようとしている(改憲すれば違憲ではなくなる)ように見えますね……。

この第27条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

この第27条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

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