【日本国憲法第31条の解説】刑罰は法律による手続きを踏まえねばならない

日本国憲法第31条

こちらは日本国憲法第31条の解説記事です。

前編・後編の2部構成としています。
基本的には前編だけでも、その条文の伝えたいこと、
自民党提案の改憲草案の中身(問題点)がわかるようにしています。
まずは前編でも是非読んでいただけたら嬉しいです。

前編・後編の2部構成としています。
基本的には前編だけでも、その条文の伝えたいこと、自民党提案の改憲草案の中身(問題点)がわかるようにしています。
まずは前編でも是非読んでいただけたら嬉しいです。

更に深堀した内容は後編に書いていますので、
興味のある方は最後まで是非。

更に深堀した内容は後編に書いていますので、興味のある方は最後まで是非。

目次

前編:日本国憲法第31条【生命及び自由の保障と科刑の制約】

意訳

法律による手続きを踏むことなく、生命や自由を奪ったり罰することはできない。

原文

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

この第31条が伝えたいポイント

これもまた、人身の自由を保障している条文のひとつです。
何が犯罪なのか、どんな手続きを踏むのか。それはすべて「適正な法律」によるものでなければならないとしています。

自民党による改憲草案について

何をどう変えようとしている?

現在の「法律の定める手続き」を、「法律の定める適正な手続き」と、「適正」という単語を追加しようとしています。

問題点は?

適正な手続きさえ踏んでいれば、その後のことは知らないよとなりかねません。
例えば、法律で定められていない内容で逮捕されるかもしれないし、
刑罰もその時の国家権力の判断ですべてが決まってしまっても、違憲とならなくなってしまいます。

前編はここまでです。後編では更に詳しく解説していますので、興味のある方はよかったら是非!ちなみに、改正草案の原文も後編の方で記載しています。
この第31条と繋がりのある条文記事も是非!記事下にあります➡繋がりのある条文を見る

後編:日本国憲法第31条を更に深堀してみよう

要点①:人身の自由の中でも重要な条文

第18条と並んで、人身の自由を保障した条文であるとも言えます。
第18条は奴隷的拘束や苦役を禁じた条文です。記事末にも改めてリンクを貼ります)

というのも、この条文では、
人身の自由を制限する場合は法律に則った手続きを踏まなければならないとしているからです。

つまり、法律による手続きなく、人身の自由を制限することはできません(許されません)と言っているのです。

人々の人身の自由を奪うというのは、それは大きな人権侵害でもありますから。

要点②:この条文のいう「法律」は適正なものでなければならない

この条文では、「手続きの仕方を法律で定めなさい」としています。
これは「手続の法定」と言われています。

とはいえ、この条文は手続きの制定だけを求めているわけではありません。
手続きさえ法律で定めれば、中身はなんでもいいわけではありませんからね。

以下の3つの意味も含めての条文であると解釈されています。

【ⅰ】適正手続きの保障(手続の法定):告知と聴聞

法律で定められた「手続きの中身」が適正であること。

いくら法律で定められているからからとはいえ、例えば、

あみだくじで逮捕するか否かを決めてもいい。
どんな形であれ(拷問させて)自白させればそれだけでいい。
警察側が許可なく盗聴したり、郵便物を勝手に見たりして、かつ証拠をでっちあげてもいい。

このようなのを「適正な手続き」なんて、到底いえませんよね。

そのようなことも勿論のこと、
この憲法にて強く言われている(解釈されている)適正な手続きというのは、

「告知と聴聞」

です。

告知

刑罰等を科す時は、対象者にその内容をあらかじめ知らせること
例)「〇〇の容疑であなたを逮捕します」等

聴聞

上記の対象者に告知をした後、その対象者に弁解と防御の機会を与え、相手の言い分を聞くこと
例)「何か言いたいことはありますか?」等

こういった手続きを必ず踏まなければならないとされています。

また、例えば被告人の所持していたものを没収する際、
他の人のも入っていた場合はその人に対しても告知・聴聞の機会を与えねばなりません。

【ⅱ】実体もまた法律で定められねばならない:罪刑法定主義

実体、それは簡単に言えば刑法のことです。

犯罪とは何か。
どんな犯罪には、どのような(どのぐらいの)刑罰を与えるのか。

このようなことを定め、そして周知しなければなりません。

これを罪刑法定主義と言います。
近代刑法の大原則でもあります。

法律がなければ犯罪はなく、法律がなければ刑罰はない。

これにより、国家権力が勝手に処罰を与えることはできなくなったのです。
そして私たちは、何が犯罪か・何をすれば刑罰の対象となるのかがわかっているため、
自由に動けるようになりました。

【ⅲ】法律で定められた実体もまた適正でなければならない:実体の適正

実体つまり刑法の中身も適正でなければなりませんよ、ということもこの条文に含まれています。

例えば、

政府を批判したから逮捕
国家権力が苦々しく思っている人のSNSをフォローしているから逮捕

なんてのはおかしいですよね。

また、例えば「食い逃げしたから逮捕」までは良くとも、
刑罰は死刑もしくは無期懲役とかなったら明らかにやりすぎですよね。
犯罪行為の中身と刑罰が釣り合っていません。

このように、刑法の中身、
何をもって犯罪とするかだけではなく、それに対する刑罰の重さ等も適正であれ、ということです。

改憲草案原文:第31条

※赤文字が変更箇所です

何人も、法律の定める適正な手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

改憲草案の問題点①:「適正」という言葉をわざわざ追加した理由を考えなければならない

今回、そのままでもよさそうなところをわざわざ「適正」という言葉を挿入してきました。
その理由については述べられていません。

確かに現憲法で「解釈されている」ものを明確化しただけだとも考えられるものです。

そう思う方も多いでしょう。

ですが、言葉が変われば、その理由を改めて解釈しなければならないものなのです。
普段の、例えば校則や就業規則等においても改正が行われる際は
「なぜ、この言葉にするのか?なぜ削除するのか?」というのもひとつひとつ明確にしなければなりません。

ということからして、改めて考えてみると……

改憲草案の問題点②:「適正」の対象が「手続き」だけになる?

現憲法では「適正」という言葉がないおかげで、
適正の対象は手続きそのものだけではなく、
罪刑法定主義や実体(刑法)の中身の適正も求められていると解釈することができたのです。

それが、「適正」という言葉を追加することにより、
どうしても「適正なもの」が求められているのは「手続き」であると読めてしまいます
適正の範囲が限定されてしまう、限定的だという判断になってもおかしくなくなってしまうのですね。

そのことにより、罪刑法定主義や実体の適正が蔑ろにされる可能性が生まれてしまいます

つまり、

告知と聴聞さえしていれば、
その後のことは法律に則っていない、または無茶な法律だったとしても問題ありませんよ

となりかねない、ということです。
何しろ、憲法が罪刑法定主義や実体の適正を保障していないとも読めるのですから。

考えられるのは、大きくは以下の2つだと思います。
(他の改憲草案と照らし合わせて)

  • 軍法会議における刑罰の自由(法律の対象外としたい)
  • 公益及び公の秩序に反した者への刑罰等

そうなれば、私たちはまた、ある日突然逮捕されたりすることもあるでしょう。
また、例えば、通りすがりにちょっと肩がぶつかっただけなのに、
その相手が国家権力の人だったからとその場で逮捕されて拷問されるかもしれません。

そういったことさえも、「違憲ではない」となりかねないのがこの改憲草案なのです。

つまり、私たちの人身の自由が奪われてしまうに等しいのです。

このサイトのあちこちで言っていますが、
憲法というのはすべて繋がっていますので、他の改憲草案と繋げて考えてみても、
決して考えすぎではないでしょう。

後記

これも、私たちの人身の自由を守るための大切な条文です。
この条文があるからこそ、国家権力の勝手な気分で逮捕されたり、重い刑罰を科せられるようなはありません。

ただ「実体の適正」については、今もなお検討の余地がたくさんあるでしょう。

飲酒運転で人を殺した人に対する刑罰の軽さ。
性犯罪の加害者に対する刑罰の軽さ、それ以前に犯罪とならなかったり。
政治家に対する甘さ。

等々。

それでも、これは法律を見直して改正していけばいいことであり、
憲法としては、とにかく私たちの自由を保障し、国家権力側の暴走を止めている、大切な条文です。

この第31条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

この第31条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

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