こちらは日本国憲法第34条の解説記事です。
この第34条が伝えたいポイントというのは……
具体的にはどういうことなのか?
そして、自民党が推し進めようとしている改憲草案の中身は?
その問題点とは?そういった解説・考察をしています。
ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです!
日本国憲法第34条【抑留及び拘禁の制約】
意訳
原文
日本国憲法第34条を更に深堀してみよう
要点①:「抑留または拘禁」の意味
憲法と刑事訴訟法では言葉の意味合いが異なっています。
この憲法では、以下の意味で使われています。
- ■抑留
-
短期の拘束
- ■拘禁
-
比較的長期の拘束
- ■逮捕
-
犯罪の嫌疑を理由として、身体を拘束すること
ともかくも、身体を拘束するということですね。
憲法と刑事訴訟法では言葉の意味合いが異なっています。この憲法では、以下の意味で使われています。
- ■抑留
-
短期の拘束
- ■拘禁
-
比較的長期の拘束
- ■逮捕
-
犯罪の嫌疑を理由として、身体を拘束すること
ともかくも、身体を拘束するということですね。
要点②:なぜ「正当な理由」が必要なのか
「身体を拘束する」という行為は、人権の制約するということです。
それもかなり強い制約、つまり一種の人権侵害であるとも言えます。
相手の自由を奪っているわけですからね。
とはいえ、犯罪を犯した・もしくはその疑いのある人のことを拘束しなければ事件の解決ができません。
だからこそ「なぜ拘束するのか」、
つまり「人権を制約するに値する真っ当な理由」を示してこそ、
そこでようやく拘束することが許されるのです。
「正当な理由」とわざわざ書いているのも、
そうしなければ「不当な理由でもなんでもいい」ということにもなってしまうからです。
そして「本人及びその弁護人の出席する公開の法廷の場で示さなければならない」としたのも、
これも権力側にブレーキを掛けるためです。
公開の場で本人及び弁護人の前で堂々と説明することができないのに、
勝手に逮捕なんかしてはいけませんよ、ということですね。
大日本帝国時代は、正当な理由なく拘束することがまかり通っていましたが、
現憲法のおかげで、権力側の暴走へ歯止めがかけられるようになりました。
「身体を拘束する」という行為は、人権の制約するということです。それもかなり強い制約、つまり一種の人権侵害であるとも言えます。相手の自由を奪っているわけですからね。
とはいえ、犯罪を犯した・もしくはその疑いのある人のことを拘束しなければ事件の解決ができません。
だからこそ「なぜ拘束するのか」、つまり「人権を制約するに値する真っ当な理由」を示してこそ、そこでようやく拘束することが許されるのです。
「正当な理由」とわざわざ書いているのも、そうしなければ「不当な理由でもなんでもいい」ということにもなってしまうからです。
そして「本人及びその弁護人の出席する公開の法廷の場で示さなければならない」としたのも、これも権力側にブレーキを掛けるためです。公開の場で本人及び弁護人の前で堂々と説明することができないのに、勝手に逮捕なんかしてはいけませんよ、ということですね。
大日本帝国時代は、正当な理由なく拘束することがまかり通っていましたが、現憲法のおかげで、権力側の暴走へ歯止めがかけられるようになりました。
要点③:弁護人へ依頼する権利を与えられる理由(弁護人依頼権)
拘束された人は、最初の段階から弁護人を依頼する権利が与えられます。
これを「弁護人依頼権」と言います。
それは、被疑者(拘束される側の人たち)のほとんどは、法律に詳しくありません。
かたや、警察、それ以上に検察側は法律のプロです。
(加えて警察は圧迫・脅迫のプロでもありますね)
最初から、闘う力量の差はすごく大きいのは想像つくと思います。
そんな状態で弁護士がいなければ、被疑者はどうなるでしょうか。
向こうの口車に乗せられて、関係ない罪まで思わず認めてしまったり。
検察側に有利なまま裁判も進み、背負う必要のない罪まで背負わされるかもしれません。
はたまた、情状酌量の余地があったはずのことさえも、
何もないまま一番重い罪を科せられたりする恐れがあります。
そういったことを避けるために、被疑者には弁護人を依頼する権利が与えられます。
なお、依頼費用がない場合は、国選弁護人を依頼するか、
または分割払いを利用して私選弁護人を依頼するという方法があります。
拘束された人は、最初の段階から弁護人を依頼する権利が与えられます。これを「弁護人依頼権」と言います。
それは、被疑者(拘束される側の人たち)のほとんどは、法律に詳しくありません。かたや、警察、それ以上に検察側は法律のプロです。(加えて警察は圧迫・脅迫のプロでもありますね)
最初から、闘う力量の差はすごく大きいのは想像つくと思います。
そんな状態で弁護士がいなければ、被疑者はどうなるでしょうか。向こうの口車に乗せられて、関係ない罪まで思わず認めてしまったり。検察側に有利なまま裁判も進み、背負う必要のない罪まで背負わされるかもしれません。
はたまた、情状酌量の余地があったはずのことさえも、何もないまま一番重い罪を科せられたりする恐れがあります。
そういったことを避けるために、被疑者には弁護人を依頼する権利が与えられます。なお、依頼費用がない場合は、国選弁護人を依頼するか、または分割払いを利用して私選弁護人を依頼するという方法があります。
この第34条の改憲草案はどんな内容?
自民党はこの第34条をどのように改憲しようとしているのでしょうか。
そして、その問題点とは?
簡単にいうと、以下の通りです。
改憲草案の原文を紹介します。そして具体的に考察もしてみました
改憲草案原文:第34条
※赤文字が変更箇所です。
改憲草案の問題点①:不当行為が認められる余地が出てきた
いきなりですが、4つの接続詞の意味から始めます。
- 若しくは
-
選択の接続詞。2つ以上の事柄から、どちらを選んでもよいことを表す。
- 又は
-
選択の接続詞。2つ以上の事柄から、どちらを選んでもよいことを表す。
- 且つ
-
並列の接続詞。事柄が並行して行われていることを表す。
- 又
-
並列の接続詞。1つの事柄と対等にある事柄を追加するときに使う。
これを踏まえて、下記の条文を読んでみてください。
【改憲草案】
何人も、正当な理由がなく、若しくは理由を直ちに告げられることなく、又は直ちに弁護人に依頼する権利を与えられることなく、抑留され、又は拘禁されない。
【現憲法】
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。
又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず(以下略)
違いが判るでしょうか?
現憲法では「並列の接続詞」を使っているので、抑留・拘禁したいのであれば、
- 理由を直ちに告げる
- 直ちに弁護人に依頼する権利を与える
- 正当な理由を必要とする
この3つ全てが満たされなければならないとされています。
このことにより、
「直ちに告げる理由は正当なものでなければならないし、弁護人に依頼する権利もなければならない」
となります。
ところが、改憲草案では「選択の接続詞」に置き換えられています。
このことにより、
- 正当な理由
- 理由を直ちに告げる
- 弁護人に依頼する権利を与える
この3つの「いずれか」を与えれば、抑留・拘禁して構わないことになってしまうのです。
そう、例えば直ちに理由を告げれば、それは不当な理由でも構わないのだと。
弁護人に依頼する権利を与えなくても構わないのだと。
そういう風にも解釈が可能となりますし、実質そうなるでしょう。
この細かくも大きな変更からも、国民の人権を守る気がないことは明らかです。
※実際、他の条文の改憲草案では、
国家権力側が基本的人権を制限・侵害することが可能となる変更があります。
違いが判るでしょうか?現憲法では「並列の接続詞」を使っているので、抑留・拘禁したいのであれば、
- 理由を直ちに告げる
- 直ちに弁護人に依頼する権利を与える
- 正当な理由を必要とする
この3つ全てが満たされなければならないとされています。このことにより、「直ちに告げる理由は正当なものでなければならないし、弁護人に依頼する権利もなければならない」となります。
ところが、改憲草案では「選択の接続詞」に置き換えられています。このことにより、
- 正当な理由
- 理由を直ちに告げる
- 弁護人に依頼する権利を与える
この3つの「いずれか」を与えれば、抑留・拘禁して構わないことになってしまうのです。そう、例えば直ちに理由を告げれば、それは不当な理由でも構わないのだと。弁護人に依頼する権利を与えなくても構わないのだと。
そういう風にも解釈が可能となりますし、実質そうなるでしょう。この細かくも大きな変更からも、国民の人権を守る気がないことは明らかです。
※実際、他の条文の改憲草案では、国家権力側が基本的人権を制限・侵害することが可能となる変更があります。
改憲草案の問題点②:抑留・拘禁した理由を公開しなくてもよくなる
【改憲草案】
拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有する。
【現憲法】
(略)要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示さなければならない。
「示さなければならない」を「権利を有する」へ変更してきています。
現憲法の「示さなければならない」は、もう確定事項であり、必ずやらなければなりません。
ですが、「権利を有する」とすることによって。
司法側が、被疑者を抑留・拘禁している理由を公表しなくても問題ない、となってしまうのです。
なにしろ「求める権利はあるけれど、どうするかを決めるのはこっち(司法側)」になるのですから。
「示さなければならない」を「権利を有する」へ変更してきています。現憲法の「示さなければならない」は、もう確定事項であり、必ずやらなければなりません。
ですが、「権利を有する」とすることによって。司法側が、被疑者を抑留・拘禁している理由を公表しなくても問題ない、となってしまうのです。
なにしろ「求める権利はあるけれど、どうするかを決めるのはこっち(司法側)」になるのですから。
改憲草案の問題点③:理由の公開を求められる人が限定される
【改憲草案】
拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有する。
【現憲法】
又、何人も、(中略)要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示さなければならない。
公開の法定で、自分を拘禁した理由を示すよう要求できる権利を持つ人が限定されています。
(そのように読めますし、限定した法律に変えても問題ないことになってしまう)
現在は「要求できるのは誰か」というのは、憲法上では限定されていません。
ゆえに、刑事訴訟法にて以下のように定められています。
公開の法定で、自分を拘禁した理由を示すよう要求できる権利を持つ人が限定されています。(そのように読めますし、限定した法律に変えても問題ないことになってしまう)
現在は「要求できるのは誰か」というのは、憲法上では限定されていません。ゆえに、刑事訴訟法にて以下のように定められています。
つまり、当事者だけではなく、弁護人や代理人はもちろんのこと、血縁関係にある家族。
それだけではなく、他人だとしても利害関係にある人が求めることも認められています。
ところが、改憲草案では憲法そのものに「拘禁された者」と明記しています。
つまり、「求めることができるのが当人だけ」なのです。
憲法は法律よりも強い、つまり日本における最高法規ですので、
現在の刑事訴訟法も改正もしくは該当箇所を削除してしまっても何の問題もなくなってしまいます。
人権侵害では?不当逮捕では?と周囲が批判しても、
「合憲」と言われればそれまでとなってしまいかねません。
誰も、助けることができなくなってしまうのです。
つまり、当事者だけではなく、弁護人や代理人はもちろんのこと、血縁関係にある家族。それだけではなく、他人だとしても利害関係にある人が求めることも認められています。
ところが、改憲草案では憲法そのものに「拘禁された者」と明記しています。つまり、「求めることができるのが当人だけ」なのです。
憲法は法律よりも強い、つまり日本における最高法規ですので、現在の刑事訴訟法も改正もしくは該当箇所を削除してしまっても何の問題もなくなってしまいます。人権侵害では?不当逮捕では?と周囲が批判しても、「合憲」と言われればそれまでとなってしまいかねません。
誰も、助けることができなくなってしまうのです。
改憲草案の問題点④:突然抑留・拘禁されても、違憲ではなくなる
問題点①②③と説明してきましたが、ここでまとめます。
この改憲が行われた場合、どのようなことが起こるのか……。
まず、改憲草案全般にわたって、基本的人権に制限をかけても(侵害しても)違憲になりません。
その対象は「公益及び公の秩序に反した者」
つまり「国の利益にならない人・自民党の思い通りにならない人」です。
そのことにより、
「公益及び公の秩序に反した」ことを理由に突然逮捕することが可能となってしまいます。
それを批判する人もまたすぐに逮捕して、そしてその理由を非公開としてもいいのですから。
そうなれば、私たちは政府を批判することもできず、
それ以外でも何が権力側の逆鱗に触れて突然逮捕されるかもわからないまま
(なにしろ、正当な理由がなくてもよくなるのですから)
日々を怯えながら暮らすことになってしまいます。
考えすぎだと思う方もいるかもしれません。
ですが、ほんの少し前まで、そういう社会だったということを忘れてはいけません。
問題点①②③と説明してきましたが、ここでまとめます。この改憲が行われた場合、どのようなことが起こるのか……。
まず、改憲草案全般にわたって、基本的人権に制限をかけても(侵害しても)違憲になりません。その対象は「公益及び公の秩序に反した者」つまり「国の利益にならない人・自民党の思い通りにならない人」です。
そのことにより、「公益及び公の秩序に反した」ことを理由に突然逮捕することが可能となってしまいます。それを批判する人もまたすぐに逮捕して、そしてその理由を非公開としてもいいのですから。
そうなれば、私たちは政府を批判することもできず、それ以外でも何が権力側の逆鱗に触れて突然逮捕されるかもわからないまま(なにしろ、正当な理由がなくてもよくなるのですから)日々を怯えながら暮らすことになってしまいます。
考えすぎだと思う方もいるかもしれません。ですが、ほんの少し前まで、そういう社会だったということを忘れてはいけません。
現憲法をもう一度読む
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示さなければならない。
後記
刑事ドラマ等で、警察が被疑者を逮捕する時、
「〇〇の理由で逮捕する、あなたには弁護人を~~」と言っているのを聞いたことがあると思います。
それはこの第34条に則ったものです。
まとめますと、私たち国民を権力側から守るために、人権を保障するために、
下記3つの点を権力側(司法側)に課し、歯止めをかけているのです。
- 正当な理由を直ちに告げること
- 弁護人に依頼する権利を直ちに与えること
- 本人及び弁護人が出席している公開の法定の場で、正当な理由を示すこと
また、それを請求できる人は、当人以外でも構わない
刑事ドラマ等で、警察が被疑者を逮捕する時、「〇〇の理由で逮捕する、あなたには弁護人を~~」と言っているのを聞いたことがあると思います。それはこの第34条に則ったものです。
まとめますと、私たち国民を権力側から守るために、人権を保障するために、下記3つの点を権力側(司法側)に課し、歯止めをかけているのです。
- 正当な理由を直ちに告げること
- 弁護人に依頼する権利を直ちに与えること
- 本人及び弁護人が出席している公開の法定の場で、正当な理由を示すこと。また、それを請求できる人は、当人以外でも構わない
繋がりのある条文
この第34条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。
(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
この第34条とも繋がりの深い条文は以下の通りです。(リンクの文章は記事のタイトルではなく、関連がわかるような紹介文にしています)
興味のあるところを是非。
- 第31条:刑罰を科す場合は、法律の定める手続きに従うこと
- 第32条:裁判を受ける権利は誰もが持っています
- 第33条:逮捕する際は、正式な令状が必要である(現行犯は例外)
- 第35条:正式な令状がなければ、捜索や押収も認められない
- 第36条:残虐な刑罰は「絶対に」禁止
- 第37条:刑事事件における被告人は仁荘な公開裁判を受ける権利があります
- 第38条:自白の強要は禁止されています
- 第39条:一旦無罪となったら、実は犯人だったとわかってもその事件で再逮捕することはできません
- 第40条:抑留・拘禁後無罪だと分かった場合は、その補償を国に求めることができます。
最後まで読んでくださってありがとうございました!